陸上自衛隊の“すごい会議”〜今から56年も前に定義されていた「あるべき会議」の姿とは?
目次
頻繁で長い会議はストレス
皆さんの会社ではどれくらいの頻度で会議が行われていますか?
そして一回の会議はどれくらいの長さでしょうか?
中には、「1日の仕事の大半は会議で、会議と会議の間に次の会議を準備している。」なんて人もいるかもしれません。
DIMEの調査によると、管理職の場合は「週1〜2回」と「週3〜4回」と回答した人が56%。
(出典:一般職より管理職のほうが会議の頻度が多く、会議の時間も長いはなぜ?)
週4回となるとほぼ毎日で、さらには1日に2〜3回会議に出席することもあるでしょう。
会議は重要な決定を行なったり、認識の統一を図ったりする場なので、必要不可欠なものだとは思います。
一方で、会議に拘束されている時間はほかの仕事が進まず、会議の出席頻度が上がるほど残業が増えることもあるでしょう。
また、ダラダラと長い会議はその場にいるだけでイライラすることも。
そうなると、会議は大きなストレスの原因となってしまいますね。
では、どんな会議なら理想的なのか?
というわけで、今回の記事では陸自流の会議について説明したいと思います。
参考にするのは陸自教範(教科書)の「野外幕僚勤務」。
これは、司令部などで指揮官をサポートする幕僚(古い表現であれば「参謀」)が、勤務上の準拠としている教範です。
一般には販売されていないものですが、国会図書館で1968年版を閲覧することができます。
今から56年前に、すでに会議についての準拠が記されていたことにちょっと驚きますね。
でも、その内容は今でも十分に適用可能だと思いますよ。
陸自流の会議その1:なるべく会議はしない
いきなり「?!」と思ったかもしれませんが、もちろん会議は陸自においても重要なものです。
しかしながら、最初に強調されているのは、「会議の必要性の有無を検討して、真に必要な会議のみを実施しなさい。」ということ。
会議を開催するにあたっては、会議以外の方法で、会議と同じ目的を達成できるか否かを検討することから始めます。
なるべく会議をしないに越したことはない、ということですね。
会議は必要な人が集まって、その場で重要な決定ができるなどの利点も確かにあります。
一方で、会議中は他の業務が進められないなど、見方を変えれば業務妨害的なものにもなってしまいます。
また、会議の準備もそれなりに大変ですよね。
だから、まずは絶対に会議でなければならないかどうかを検討するのです。
皆さんの会社で言えば、プロジェクトの進捗状況を確認するような会議は、場合によっては会議でなくても良いかもしれません。
ガントチャートなどでも十分確認できるので。
陸自流の会議その2:会議をするのなら万全な準備を
まず「万全な準備=準備に時間をかける」ではありません。
どうすれば会議の目的を達成できるか考え、そのための準備をする、ということです。
野外幕僚勤務には、
①会議の目的、日時、出席者、討議事項などをなるべく早めに予告
②関係資料の収集・整理をできるだけ早めに着手
③開催日の日時、所要時間は、各幕僚の業務、部隊の行動等を考慮し、それらを妨げないよう決定
④参集者は直接必要な範囲に限定
⑤関係部外機関との会議を行う場合は十分に事前連絡
とあります。
中には、どうしても時間がかかってしまうものもあるかもしれませんが、
「目的を達成するために必要最小限に」
ということを忘れなければOKです。
ちなみに、個人的には③、④は重要だと思います。
会議は人の時間を奪って開催するものなので、出席者の業務や予定を妨害しないように留意しなければなりません。
また、「議題にはあまり関係ないが、なんとなく必要かもしれないと思ったので呼んだ。」は戒めるべきだと思います。
そういう理由で呼ばれた人は、しばしば不規則発言などで会議を壊してしまうことがあるので。
さらには、「自分には権限がない」との理由で意見を述べないこともあるかもしれません。
そうなってしまうと、主催者、出席者ともにただの悲劇になってしまいます。
陸自流の会議その3:出席者の意識が大事
効率的で実のある会議を行うためには、主催する側の準備が大事だということは言うまでもありませんが、出席する側の意識も極めて重要です。
野外幕僚勤務では、
「参集者は互いに他の発言内容を正しく理解するとともに、会議の目的達成に寄与する建設的な意見を簡明に述べる。」
とされています。
これ以上のことは書かれていませんが、発言を理解する、目的達成に寄与するためには、出席前に会議の目的や議題をしっかり把握しておかなければなりません。
そして、意見を述べるときの言葉遣い、タイミングも重要です。
目的を理解していなかったり、爪痕を残そうとして変なタイミングで発言したりすると会議が紛糾してしまうかもしれません。
最悪なのは、会議が終わった後に主催者側に意見を提出する出席者。
これは自分の勉強不足を棚にあげた、アンフェアな行為だと思います。
現実には難しいのが実態ですが・・・
ここまで書くと、「陸自ではどこに行っても理想的な会議が行われているのだろう」と思うかもしれませんが、
私が現役の頃はそうでもありませんでした。
ダラダラと長かったり、不規則発言があったり、なぜ出席しているのか理解していない人がいたり・・・
教範に記述されているように会議を行うことは、なかなか難しいのが現実です。
もしかしたら、今の陸自ではもっと改善されているかもしれませんが。
ちなみに、野外幕僚勤務という教範にはその解説本もあります。
こちらも国会図書館で閲覧できるのですが、会議の解説として、「会議主催者の心得30ヶ条」というものがありました。
この記事の結びとして、その中から私が選んだ10ヶ条を発表したいと思います。
- 平素から信頼を失うようなことないように心がける。会議の場だけを取り繕ってもダメだ。
- 良いセールスマンであること。会議を参会者に売り込むとともに、結論を上司や当局に売り込む必要があろう。
- 定時に開始し定時に終了させる。
- 話そうとするよりも聞こうと心がける。
- 自己の立場を弁護しない。
- 参会者を窮地に陥れない。
- 参集者に親近感を持つ。例えば名前を覚えておく。
- 抽象的な議論をもてあそばない。
- 一度も発言しない人をつくらない。全員に結論に参画した気持ちを持たせて帰す。
- 会議が終わっても主催者の役目は終わらない。責任感のある主催者は会議の結論の行方を見守るであろう。
以上です。
皆さんのご参考になれば幸いです。