自衛隊での不祥事が多発〜規則の改訂や新たな施策で現場は疲弊していないか心配

自衛隊で特定秘密不正

2024年4月、海上自衛隊と陸上自衛隊で特定秘密の漏洩事案がありました。
これは部外者に漏洩したものではなく、特定秘密を取り扱うための適正評価を受けていない隊員が、特定秘密に該当する情報を取り扱ったというものでした。
そして7月の報道では、多数の護衛艦において、特定秘密の取り扱いができない隊員が、当直勤務の際にCIC(戦闘指揮所)で特定秘密に触れていた事が明らかになったとありました。
さらには12月、新たに100件の不正が発覚しました。
ここまで見ると、「自衛隊という、情報の取り扱いに敏感な組織において、なぜ高度な秘密がこんな杜撰な扱いに?」
と疑問を持たれる方もいるでしょう。
一般的にはこの種の事案が起きると、
「もっと規則を厳しくしろ」
とか、
「規則を徹底するための何らかの施策をやれ」
といった論調になろうかと思います。
しかし、私の経験からは、この種の対策はむしろ逆効果ではないかと危惧してしまいます。

[カシオ] 腕時計 ジーショック 【国内正規品】Iconic Styles DW-5600RL-1JF メンズ ブラック

新品価格
¥12,100から
(2025/1/3 13:08時点)

多種多様な規則類や施策への対応で現場は疲弊していないか?

規則の厳格化や新たな施策の導入がなぜ逆効果となるのか?
それは、ただでさえ業務過多な現場をますます疲弊させ、規則類の遵守が疎かになる可能性があると見ているからです。

自衛隊には有事を想定した任務が付与されており、それに備えた訓練を日々行っているイメージがあると思います。
しかし、実際の部隊での隊務(日々の業務)はそれだけではないのです。
むしろ、訓練以外の部分に多くの時間を割くこともあります。
例えば各種の検査への対応。
支給された個人用の被服などが帳簿通りにあるか。
作成したり配布された書類などが規則通りに管理されているか。
請求した物品や糧食が適正に管理または消費されたか。
そしてもちろん、秘密保全に関する検査もあります。
現場、つまり部隊では、年間を通じて様々な検査を受けなければなりません。
そして、そのための準備に長時間を要することも多々あります。

定期的にあることなのに、なぜその対応に時間がかかるのでしょうか?
その理由の一つは、それぞれの検査の根拠となる規則類の改訂が頻繁にあり、その内容を理解して準備する必要があるからです。
ここで言う「頻繁に」とは、「一つの規則が短い期間に何度も改訂される」という意味ではありません。
多種多様な規則がそれぞれランダムに改定され、それを受ける側にとっては「短い期間に頻繁に」と捉えられることを指します。

一つの新たな規則類の改訂を現場に徹底するのは大変です。
中央(防衛省本省)で決定されたことを集合教育などで地方の司令部の担当者に理解させ、地方の司令部で理解したことを隷下(指揮下)の部隊の担当者を集めて説明し理解させ、部隊内では各中隊の担当者に理解させ、そして中隊内では各隊員に理解させる。
規則類は一般的な事項が記載されている事が多く、それぞれの現場に適合させようとすると、様々な例外的なケースが生じます。
「うちの部隊ではどう対応すべきか」と考えている最中に、また別の規則が改訂され末端の部隊に降ってくる。
そして、理解も準備不十分なまま検査の日を迎え、多数の不備事項の指摘を受けてしまいます。

各種検査で指摘された不備事項の是正にも労力を要するものがあり、これがまた現場に負担をかけます。
最悪な場合には再検査を受ける必要もあります。

上級部隊などに規則の解釈や履行に問題があると認識された場合、さらに厄介なことが起こります。
陸自で言えば、方面総監部や師団司令部の担当部署で、「検査で同じような指摘を受けることがないように」と独自の対策を検討し、現場(部隊)にその実行を要求するのです。
もちろん、総監部などの上級司令部は、「検査で指摘を受けるとその是正や再検査への対応が大変だろうから」という親切心からなのですが、部隊にとってはやるべきことが増え、ますます多忙になって規則に従った業務に抜けが生じるという、まさに悪循環となるのです。

そして、あれやこれや手につかない中で次の訓練準備が始まり、数日間の訓練をこなして、訓練後は使用した装備品の整備を行い、訓練の振り返りを行い、次回の訓練での目標などの検討もそこそこに、各種検査や上級司令部独自の施策への対応に追われる。

余談ですが、今の自衛官には即応待機もあるので、自宅に帰ってもホッとできない人もいます。
私が現役の頃よりも、間違いなく今の自衛官は本当に多忙で、心身ともに疲弊してしまっている様子が目に浮かびます。
こんな状況なので、意図しない規則違反が生じてしまう。
「厳格化のために規則を改定したり、規則を徹底するための施策を行うことは逆効果」と危惧する理由がお分かり頂けたでしょうか。

人が増えても解決しない

政府と防衛省は、自衛官の処遇改善により募集難を克服し、勢力(隊員の実数)の充実を図ろうとしています。
しかし、人が増えることで現場の疲弊感は改善されないでしょう。

よく言われることですが、今は10人必要なところを3人でやっているのが現状。
仮にこれが10人になったら、次に50人必要なことに10人で手をつけ始めることが予想されます。
陸上幕僚監部、方面総監部や師団司令部では、人事・服務、運用訓練、情報、装備などの各担当部署がパラレルに、
端的に言えばストーブパイプ的に、
それぞれが様々な施策の検討や規則類の見直し行い、その実行を現場に求める構造になっています。
これを根本的に変えない限り、自衛官の頭数がどんなに増えても改善されないと思います。
むしろ、人が増えた分、各種施策などの徹底がさらに困難になり、
あれこれやればやるほど、現場の理解が追いつかず、規則違反に伴う事故が増えていくかもしれません。
これは大組織病と言えるかもしれません。
なかなか難しい問題ですが、平時から疲れ切ってしまい事故が多発するのはナンセンス。
何らかの改善を図るべきだと思います。

[カシオ] 腕時計 ジーショック 【国内正規品】Iconic Styles DW-5600RL-1JF メンズ ブラック

新品価格
¥12,100から
(2025/1/3 13:08時点)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です