陸自の幕僚活動から学ぶ〜組織的な仕事は適時性、先行性、並行性、完全性が大事

以前の記事で、ミリタリーの幕僚はどんな人で、どんな能力が求められるのかを解説しました。
(→「幕僚とはどんな人? 幕僚に必要な能力とは?」参照)
今回の記事では、幕僚が組織的にお仕事を進める上で、着意すべき4つの事項について解説したいと思います。
きっと皆さんの仕事にも応用できると思います。

組織的に仕事を進める幕僚活動

陸上自衛隊では、指揮官をサポートするため、部隊の規模に応じた幕僚組織があります。
連隊であれば連隊本部、師団であれば司令部がそれに当たります。
この司令部の中には、作戦立案の担当、情報分析の担当、ロジスティックの担当など、いくつかの部署があり、それぞれ協力しながら組織的に業務を行なっています。
これを「幕僚活動」と呼びますが、具体的には、指揮官の決心や構想の決定のための材料を揃えたり、指揮官の決定事項を具体的な計画に落とし込んだり、指揮官の企図を部隊に徹底したりするのが主な業務となります。
幕僚活動は、さまざまな部署の活動を統合して一つの目標を達成するようなものなので、バラバラに動いていたのでは意味がありません。
では、どんなことに気をつけながら仕事を進めていけば良いのでしょうか?
陸上自衛隊の組織的な仕事を定義する教範、「野外幕僚勤務」の記述からその秘訣を読み解いてみたいと思います。

仕事をスムーズに進めるための4要素

幕僚としての仕事は組織的なものですので、これをスムーズに進めるためには、以下の4つの項目に着意することがキモです。

  • 適時性
  • 先行性
  • 並行性
  • 完全性

ちなみにこの4項目は、現役自衛官時代に度々上司から言われていましたし、自分自身も部下にはちょくちょく言っていましたね。
それだけ、陸上自衛隊の中では重要、且つ当たり前のことです。
それでは、一つづつ解説します。

適時性

適時性とは、わかりやすく言うと常に「Good Timing」ということです。
「いつ、何を」しなければならいのかを判断し、幕僚活動の焦点を定め、業務の優先順位と実施要領を決めていきます。
そして、決められた時期までに業務を完成させるのです。
ただし、ここで注意が必要です。
「完成させる」とは「完璧に仕上げる」という意味ではありません。
この後で「完全性」を説明するのですが、その前にこれは知っておいてほしい。
教範では、「完全性を追求するあまり、適時に指揮官の要求に応じ得ないようなことは、たとえその内容がいかに優れていても全く価値がないもの」と断言しているのです。
余談ですが、実戦経験豊富な米陸軍の将校からは、「70%仕上がれば十分」ということを聞いたことがあります。
でも・・・
日本人は完全主義な傾向があり、なかなか適時性を追求するのが難しかった印象がありますね。

先行性

事態がどのように推移するのか判断しつつ、必要な分析や他の部署との調整を継続的に行なって、常に状況に先行して業務をやりなさい、ということです。
そのためには、目下の業務に集中しつつも、指揮官が次に何をしようとしているのかを考え、状況判断に必要な情報提供などをしなければならないのですが、これがけっこう「言うは易く行うは難し」なんですよね〜
その一番の原因は、全員がプレーヤーになってしまうから。
本来、その部署のリーダーは、自ら作業を行わずに全体のコントロールをしなければならないのですが、日本人のメンタリティか、部下と一緒になって作業をし、「渦中の人」になってしまいます。
これは、会社員になってから余計に感じるところですね。
結果的に、状況に追いつくことに精一杯で、先行的な業務ができなくなってしまいます。
自分自身も含め、要反省です。

並行性

教範「野外幕僚勤務」では、「司令部内、上下級部隊、関係部隊との間において、幕僚活動を並行させなさい」とされています。
並行的な業務ができれば、結果的に時間を節約し、問題点を早期に発見してその解決を容易にするなど、仕事をスムーズに進められます。
様々な部署と並行的に業務を行うためには、まず着手する前に業務の方向性とか進め方について、よく擦り合わせておく必要があります。
そして、相互に情報共有を行いながら業務を進めなければなりません。
すっごく忙しくなると、自分のところに業務に専念するがあまり、関係部署との情報共有とか調整が疎かになってしまいがちですが、注意したいところです。

完全性

ミリタリーでの完全性とは、指揮官の企図を十分に具現することを意味しています。
言い換えれば、指揮官の考えていることと、自分達が行なっている業務を一致させると言うことです。
「完全性」と言うと、誤字脱字のない文書、フォントサイズやスライドマスターの整ったプレゼン資料とかを思い浮かべるかもしれませんが、それは指揮官の意図を分かり易く、誤解のないように伝えようとした結果であり、それそのものが目的ではありません。
でも、一番時間を割いてしまいがちですが(汗)

まとめ

いかがだったでしょうか。
ミリタリーに限らず、皆さんの会社でも共通するものが多かったかと思います。
原則的なことは知っていても、実践することは難しいですよね。
皆さんの所属する組織の規模とか業務内容に応じて、この4つの項目を適用していただければと思います。
参考になれば幸いです。

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