陸自の戦術:攻撃編(その1) ただ闇雲に突進してはダメ 攻撃の定義と7つの要素

戦術行動の「攻撃」について3回に分けて解説します。
今回も陸上自衛隊の教科書である「野外令」の記述に沿って解説します。
この教科書は一般には販売されていませんが、国会図書館で昭和43年版は閲覧できます。
攻撃編(その1)では、「そもそも攻撃とは何か」ということと、攻撃において重要とされる7つの要素を説明しますね。

そもそも攻撃とは?

「攻撃」という言葉は、日常生活の中でもよく耳にしますね。
例えば、サッカーで「攻撃力に優れている」とか、人と接するときに「あの人は攻撃的だ」とか。
言葉の響き的に、何か強力に襲いかかってきそうなイメージを持ってしまいます。
そのイメージは正しいですね。
でも、これをミリタリーに置き換えた時に、めったやたらに機関銃などをバンバン撃ちまくるというものではありません。
戦術の中で「攻撃」は、以下のように定義されています。

敵を戦場に捕捉し、これを撃滅すること

つまり、自分で決めた土俵の中で相手を捕まえて、全滅にするということです。
「全滅」というと、「相手を一人残らずやっつける」という印象を受けるかもしれませんが、相手を戦えない状態にしてしまえば、全滅させるのと同じ効果が得られます。

攻撃の特性は、

「主動的に我が意志を敵に強要し、緊要な時期と場所に物心両面にわたる戦闘力を計画的に集中できるので、決定的な戦果を獲得するための最良の戦術行動」

と記述されています。
難しい言葉が多いのですが、要は
①自分が主導権を握ってやりたいことを強引にやる、相手の自由にはさせない
②一番大事なタイミングと場所に、こちらが予定した通りに全力集中できる

だから、「最終的に望んだ結果を得るために一番良い行動」、ということです。

言い換えれば、その特性を十分に発揮できなければ、攻撃としては中途半端なものになってしまう、ということになりますね。
個人的には、「相手にこちらの意志を強要する」、というところが「攻撃」の特性をよく表していると思います。

攻撃で重要な7つの要素

攻撃をする場合、次の7つの要素が重要とされています。

  1. 敵部隊の撃滅
  2. 緊要地形(重要な意味を持つ場所)の獲得
  3. 戦闘力の集中
  4. 機動の発揮
  5. 火力の優越
  6. 奇襲
  7. 警戒

敵部隊の撃滅と緊要地形の獲得

攻撃では、相手と自分にとって、重要な意味を持つ場所を奪いに行くことが主な行動になります。
よく、戦争映画なんかで、敵が守っている丘を攻撃部隊が駆け登り、てっぺんに旗を立てるシーンを見かけますが、まさにその行動です。
でも、それだけで終わるのではなく、「その成果を活用して相手を徹底的に叩くことが大事」ということです。

戦闘力の集中、機動の発揮、火力の優越

この3つは密接な関係があります。
まず、相手よりも強いの戦力を、「ここぞ!」と思うタイミングで重要な場所に集中させることが大事なのですが、そのためには、こちらが自由自在に動ける(=機動の発揮)こと必要になってきます。この自由自在に動けることは、攻撃側の持つ最大の利点とされていますが、そのためには、火力(大砲などの威力)でその動きをしっかりと掩護してあげなければなりません。全て欠くことができない要素ですね。

奇襲

相手が予想しなかったような時期、場所、方法、規模で攻撃するということなので、イメージしやすいと思いますが、大事なのは、その効果を持続・拡大させることです。
なので、「最初に一撃加えた後、何をするか?」ということもしっかり考えておかないと、相手はすぐに態勢を立て直し、奇襲した意味がなくなってしまうでしょう。
「わっ!」と驚かすだけではダメです。

警戒

守っている側にとって大事そうな言葉ですが、攻撃側にとっても欠くことできない要素です。
こちらが自由に動けると思っていたら、奇襲を受けて防戦一方になってしまうことあるので、相手の出方などに常に注意しておく必要があります。

まとめ

難しい言葉が多かったかもしれませんが、要は「こちらが主導権を持って相手に挑み、再起不能にする」というイメージを持って頂ければ概ね正解です。
攻撃(その2)では、攻撃の種類(迂回、包囲、突破)と、攻撃計画の立て方について解説しますね。


皆さんのご参考になれば幸いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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