陸自の戦術:攻撃編(その3) 攻撃では助演が大事 攻撃計画の立て方

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攻撃計画立案の手順

攻撃編(その1)で、「そもそも攻撃とは何か」と、「攻撃で大事な7つの要素」を解説し、攻撃編(その2)では、迂回、包囲、突破について解説しました。
(前回の記事はこちら→「陸自の戦術:攻撃編(その2) 迂回、包囲、突破について」)
今回は攻撃編の最終回ということで、実際に攻撃する場合の計画の立て方(手順)について解説したいと思います。
この記事も、国立国会図書館で閲覧できる、陸上自衛隊の教範(教科書)である野外令の記述に沿って解説します。

ステップ1:攻撃目標を決定する

攻撃を計画する時に、一番最初にやる作業は「どこを目標に攻撃するか?」を検討することです。
言われてみれば当たり前ですよね。
それぞれの部隊が闇雲に攻撃していては、戦力は分散するわ、いつまで経っても攻撃は終わらないわで。
なので、全員の努力や力を一つの方向に導くよう、攻撃目標を決定しなければなりません。

どんなところが目標になるか

もちろん、目標はどこでも良いという訳ではありません。
相手に対して致命的な影響を与えて、元々目指したことを達成できるものが攻撃目標となります。
その選定の手順の細部については、別の記事で説明しますが、以下のような感じです。

  • 与えられた任務を分析して、達成すべき目標(いつまでに、何を)を明らかにする。
  • 次いで、戦場となる地域を分析し、目標を達成するために必要な地形(=攻撃目標)を案出する。

攻撃目標は一般的に地形になることが多いです。
戦争映画でよく、攻撃部隊が丘を駆け登って旗を立て、その地域を確保(占領)するシーンがありますが、あれはまさに地形を目標に攻撃した状況を描いたものですね。
地形以外には、敵部隊そのものが目標になることもあります。
いずれにせよ、その地形を奪うことによって、相手をその場で撃滅できるか、または準備した場所(陣地)を放棄させるような地形が目標となります。
つまり、双方にとって、極めて重要な意味を持つ場所が「攻撃目標」、ということですね。

ステップ2:攻撃の時期、方向、要領を決める

攻撃目標が決まったら、いつから攻撃するのか、どの方向からどうやって攻撃するのか、を決めます。
これを決める手順は概ね以下のようになります。

  • 相手の防御要領を分析する
  • その相手に対する攻撃要領を検討する

これだけでは具体的に何をすれば良いかよく分からないと思いますので、これも別の記事で詳しく解説したいと思います。
この攻撃方向と要領は、攻撃編(その2)で解説した、迂回、包囲、突破のいずれで攻撃するか、というのが含まれますが、計画を立てる際はさらに詳細に「どの方向(経路)から」などを決めます。
例えば、相手の正面から攻撃する「突破」でも、目標に通じる経路が3つあれば、それぞれの経路から攻撃した場合を分析し、こちらの強みを一番発揮できそうな経路からの攻撃を決定する必要があります。

攻撃部隊を区分して戦術的な組織を整える

「これって何のこっちゃ?」と思われたかも知れません。
例えば部隊が10コあったとして、歩兵部隊もあれば戦車部隊、大砲の部隊がある時に、全員で同じ方向から攻撃することはないです。
歩兵部隊と戦車部隊と組み合わせたり、その量を調節したりします。
これが部隊の区分ですが、通常は攻撃目標を取りに行く部隊(主攻撃と言います)と、この主攻撃の攻撃進展を助ける部隊(助攻撃と言います)とに区分します。
主攻撃には必要な戦闘力(部隊や火砲)を惜しみなく与え、攻撃する正面幅もなるべく狭くして、戦闘力を集中させやすくします。
一方、助攻撃には、必要最低限の戦闘力を配分して、勢力よりも広い攻撃正面を与えます。
こう書くと、主攻撃が1軍選手、助攻撃は2軍選手のような印象を受けるかも知れませんが、実は助攻撃は大変難しい攻撃をしなければなりません。
少ない勢力ですが、あたかも主攻撃のように振る舞ったり、相手の部隊を助攻撃の正面に使わせたりと。
野外令には「猛烈果敢な戦闘により主攻撃に寄与」と記述されていますが、闇雲に突進するだけでは早々にやられてしまい、かといって慎重すぎると、相手から「あ、こっちの敵は大したことないな」と適当にあしらわれ、防御側は主攻撃正面に努力を集中するようになってしまいます。
相手の出方などを知り尽くした、歴戦の猛者に任せるべき攻撃だと思います。
主攻撃、助攻撃の他に、予備隊をしっかり作っておくことも大事です。
戦闘は、こちらが予想した通りに進展するとは限りません。
主攻撃部隊が途中でヘロヘロになったり、成果をもっと拡大できそうな場面があったり、思いもしなかった敵からの反撃を受けたりと。
そんな場合に、予備隊を使って主攻撃部隊を増援したり、戦果(成果)の拡張を図ったり、敵の反撃を食い止めたりします。
ただし、相手の「騙し」にあって、早々に予備隊を使い果たさないように、使うタイミングなどの条件を、あらかじめよく検討しておく必要があります。

まとめ

攻撃計画の立案は、攻撃目標を決め、攻撃する時期・方向・要領を定めた後、攻撃のための組織を整えるという手順で行うことが分かって頂けたと思います。
これを企業の活動に置き換えると、ターゲットとなる市場の中で、競合に撤退を余儀なくさせるような分野を目標に設定し、どのようなタインミング、段階を踏んで参入するか検討し、いくつかの営業チームを組織して、その中で目標とする分野を競合から奪うチームに必要な資源を最大限投入。それ以外は必要最小限の資源配分で競合の関心を分散させ、最終的に狙った分野を奪い取れるよう計画する。
そんな感じでしょうか。
今回はちょっと難しかったかも知れませんが、今後、意思決定手順の記事を書いていきますので、それと併せて読んでいただければと思います。

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