防衛3文書の改訂〜ここにも注目してほしい!「自衛隊の主要な施設の強靱化」と「組織定員の最適化」

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改訂された防衛3文書は注目点が満載

前回の記事で、防衛3文書の改訂の中で、衛生機能の変革に注目すべきと書きました。
(前回の記事はこちら→『防衛3文書の改訂〜注目すべきは「敵基地攻撃能力の保有」だけではない! 衛生機能の変革に注目せよ』)
しかし、今回改定された3文書には、このほかにも注目点が満載です。
という訳でこの記事では、その他の注目点を2つピックアップして解説したいと思います。

自衛隊司令部施設の地下化

昨年12月31日の讀賣新聞オンラインに、「自衛隊4司令部施設の地下化」という記事が掲載されていました。
以下、その抜粋です。

防衛省は沖縄や九州地方を中心に、陸上自衛隊と海上自衛隊の計4施設で司令部の地下化を2028年度までに進め、航空自衛隊基地5か所で電磁パルス攻撃対策を29年度までに行う方向で調整に入った。(中略)新たに司令部の地下化を進めるのは、陸自の那覇駐屯地(沖縄県)と与那国駐屯地(同)、健軍駐屯地(熊本県)、海自の舞鶴地方総監部(京都府)。

出典:自衛隊4施設の司令部を地下化、空自5基地で電磁パルス攻撃対策も…台湾有事見据え

これは、国家防衛戦略にある強靱性の一環として行われるもの。
「え?司令部なのに地下施設がなかったの??」
と驚いた方もいるかと思いますが、実態はそうなのです。
少なくとも、今回記事に出た陸自の3駐屯地には地下施設がないということになります。
各自衛隊の中央司令部にあたる、総隊司令部や自衛艦隊司令部を除き、ほとんど地下化はされていないのが現状ではないでしょうか。
司令部を地下化しようとすると、けっこう大変です。
単に指揮所機能だけを地下に移すわけではないので。
地下の司令部を使用するような時は、「地上では相当危険な状態が続いている」ということなので、おそらく数週間とか長い期間、地下で指揮幕僚活動を行うことになります。
そうなると、上下番のシフト勤務になるのですが、下番した人が休む場所が地上にあるようでは本末転倒。
寝床もしっかり地下に作る必要があります。
また、トイレの数も十分確保しなければなりません。
長期間、地下にこもって勤務していると不衛生な環境になることも考えられます。
なので、衣類や体を清潔に保つための洗濯室(乾燥機も忘れずに!)、シャワールームも設置すべきでしょう。
これらの施設には当然ながら女性用も必要ですね。
さらに言えば、指揮官には、幕僚作業場の喧騒から離れ、一人沈思黙考する指揮官用個室を作ってあげなければなりません。
このほかにも、糧食の備蓄庫、貯水タンク又は上水道、下水道、空気清浄装置、発電機又はバッテリー、通信回線、秘匿された非常口、消火設備など、想像しただけでも様々な付帯施設が必要になることが分かりますね。

陸自定員2000名を海空自衛隊へ

組織定員の最適化について、海空自衛隊の増員所要に対応するため、「2027年度末までに陸自定数から約 2,000 名を共同の部隊、海空自衛隊にそれぞれ振り替える」とされています。
これはかなり大胆なことです。
2000名といえば、陸自の旅団定員のおよそ半数。
wikiによると、第14旅団は人員2800名とあるので、ほぼ1コ旅団相当の定員が陸自から消滅することになります。
どうですか、かなりの規模だということが分かりますよね。
元陸上自衛官としては、なんとも言えないのが正直な気持ちですが、全体最適化には必要なことです。
日本は四面環海の島国なので、想定される有事において、脅威は空や海を経由して日本に到達します。
南西諸島などは特にそうですね。
そうなると、有事のオペレーションの主体は、どうしても海・空自衛隊ということになります。
一方で、海・空自衛隊の勢力は十分かというと、かなり心もとないのが実態。
特に海上自衛隊の人手不足は深刻です。
なぜFFMというタイプの、乗員90名(イージス艦は約300名)でも運用できる護衛艦を造ったのか。
これは、「隻数は増やしたい、でも人がいない」ということの現れだと思います。
ちなみに、米海軍の原子力潜水艦は2クルー制で、潜水艦1隻に対して2隻分の乗員がいます。
もちろん、艦長も2人いて、オペレーションごとに乗員を総入れ替えしています。
そうしないと、長期間続く過酷な任務に人は耐えられないからです。
それに比べて海上自衛隊は火の車、ではないでしょうか。
最新のシステムを導入して省人化を図るという方法もありますが、マンパワー不足を補うには限界があります。
なので、定員数を増やすことは避けられず、自衛隊全体の定員数を変えずに海空自衛隊の勢力を充実させようとすると、陸自からの振り替えが最適解、ということになってしまうのです。

本気度が伺える3文書の改訂

今回は自衛隊司令部の地下化と、陸自定数を海空自衛隊に振り替えるという2点をピックアップしましたが、ほかにも注目すべき点はいくつかあります。
例えば、防衛生産基盤の強化とか、南西地域への輸送における自己完結性の向上など。
いずれにせよ、今回の改定は個人的には過去イチの本気度が伺える内容となっています。
それだけ、東アジア情勢は緊張の度合いが増しており、有事に本当に期待通りに機能する自衛隊でなければ危うい、ということなのだと思います。
この防衛力整備計画を実行するためには財源確保が必要です。
個人的にはそのための増税やむなしと思うのですが、物価高騰など世間的には厳しい時期なので、政府には理解を得るために、より丁寧な説明をお願いしたいと思います。

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