ニュース解説:ウクライナ情勢から見る兵站の重要性

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ロシア軍の兵站事情

ロシアがウクライナに侵攻してから1ヶ月以上が経過しましたが、最近の報道では、首都キエフ近郊のロシア軍の進撃は停滞気味だとされています。
その要因は、どうやら第一線部隊に対する兵站支援が滞っていることにあるようです。
以下、Yahooニュースに掲載されていたNewsweekの記事。

 補給線の弱さが指摘されるロシア軍に関し、ウクライナ軍総参謀本部は新たに、進軍中のロシア部隊の燃料・弾薬・食糧がいずれも3日以内に枯渇するとの認識を示した。

 軍参謀本部は、「入手できている情報によると、ウクライナで活動中のロシア占領軍が備蓄している弾薬および食糧は3日分に満たない。燃料に関してはタンクローリーで補給が行われるが、これについても状況は類似している。占領軍は兵士集団の需要に応えるだけの補給ルートを構築することができなかった」と指摘している。

 出典:ロシア軍は3日以内に食糧弾薬尽きる ウクライナ側が分析

この記事を読むと、兵站の特性を捉えた準備と支援の重要性を改めて認識させられます。
ということで今回は、兵站について解説していきたいと思います。
この記事も、陸上自衛隊の戦術教範である野外令の記述に沿って解説します。
これは一般には入手できませんが、国会図書館で昭和43年版を閲覧することができます。

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兵站とは

兵站の目的、特性

兵站とは、補給、整備、回収(故障した装備品や壊れた装備品を、整備して再利用するために収集すること)、輸送、衛生、建設、不動産、労務・役務(部隊が必要とする民間の作業力を取得・配分・管理すること)の総称で、その目的は、「部隊の戦闘力を維持増進して作戦を支援すること」とされています。
つまり、作戦の可能性とか実行性を担保するものですね。
作戦を計画通りに進めるためには、戦闘力を常に維持増進し続けなければならないので、兵站支援には質・量・速さが求められることが、なんとなく想像できるかと思います。
また、兵站は、本国にある後方基地から、第一線部隊の一個人に至るまでの一貫したものであり、決して途切らせてはならないという至上命題がある一方で、そう簡単に色々な支援や処置ができるものではありません。
その特性を捉えてしっかり準備し、柔軟な思考で支援していくことが大事となります。

兵站の要則

これほどにまで重要で、そして簡単ではない兵站。
では、どんなことに留意しておけば良いのでしょうか。
野外令では兵站の要則として、以下の5つの項目をあげています。

  • 先行性と計画性
  • 融通性
  • 継続性と強靭性
  • 効率性
  • 創造性

以下、一つづつ解説します。

先行性と計画性

兵站は複雑・広範・多岐にわたるものなので、その準備には時間がかかります。
これは、支援する部隊の規模が大きくなればなるほど顕著になっていきます。
なので、物資の所要量や輸送要領などについて、作戦開始よりも十分に先行して見積り、計画的に準備を行なって、所定の期日までに物資の集積や部隊への配布、兵站支援準備を完了させておかなければなりません。

融通性

作戦は必ずしも予定通りに進むとは限りません。
また兵站は、状況が変わっても簡単にあれこれ変更できない、という特性があります。
イメージとしては、何十万トンもの商品の納品中に、「やっぱり納品先変更!」と急に言われても、すぐに対応できないような感じです。
このため、計画段階からいくつかのオプションを検討しておき、支援力にもできるだけバッファを持たせておいて、状況の変化に応じてこれを適用していくなど、融通性を持たせておくことが重要です。

継続性と強靭性

戦闘部隊は常に燃料、弾薬などを大量に消費し続ける食いしん坊。
この大飯食いの部隊の戦闘力を維持するためには、消費を満たす支援を継続しなければなりません。
しかしながら、兵站部隊は戦闘力に乏しく、敵から攻撃を受けやすいという特性があります。
なので、敵の妨害を克服して、如何に継続的な支援を行うかが兵站の要であって、強靭な輸送の確保がその基本となります。
一方で、作戦地域に兵站的独立性を持たせることも大事です。
事前に物資を作戦部隊の近傍に集積しておき、仮に一時的に輸送が途絶えても、ある程度の期間は戦えるように処置しておくことにも留意しておかなければなりません。
もちろん、集積した物資が敵の空爆などで破壊されないように、集積場所を分散させたり、防護の措置もしっかりと行うように着意する必要があります。

効率性

戦闘部隊からのニーズに対して、兵站支援能力には限界があるのが普通です。
このため、どこにどれだけの兵站支援能力を指向するか、本国内ではどの程度民間のサービスの活用できるか、などを検討して、支援の効率化を図ることに留意しなければなりません。
各種手続きの簡素化も、効率化のための一つの方策です。

創造性

兵站は常に様々な困難に直面します。
突発的な不足事態に遭遇することもあるでしょう。
このような場面では、決まりきった動き方や考え方ではどうにもならないので、目的を見失わない範囲で斬新なやり方を考え、支援の目標を達成することが大事になってきます。
これには「こうすればいいよ」というような回答はありません。
兵站に関わる人達みんなで意見を出し合い、創意工夫していくしかありません。

まとめ

ロシアは当初、短期決戦を企図していたと言われています。
このため、短期戦を前提にした準備しかしていなかったので、現在のような兵站上の問題を抱えることになってしまったと言えます。
また、ロシア軍の兵站支援には、状況に応ずる融通性にも欠けるようです。
「戦況は予期の通り進まない」ということを前提に、兵站の要則を踏まえた準備と支援が如何に重要か、ということについて、改めて考えさせられますね。
皆さんの参考になれば幸いです。

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