兵站(ロジスティック)の適否が勝敗を決める〜複雑で広範多岐にわたる兵站は作戦で最も重要です!

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兵站とは

知ってそうで知られていない「兵站」

みなさんは「兵站」という言葉を聞いたことがありますか?
ミリタリーに関心がある方ならご存知かと思います。
でも、何を持って「兵站」と言うのかは、あまり知られていないように感じます。
それはなぜでしょうか?

すごく複雑、でも作戦の要

そもそも、兵站は何を目的としたものなのでしょうか?
いつもの野外令(1963年版、国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能)によると、「部隊の戦闘力を維持増進して、作戦を支援すること」とされています。
部隊は活動すれば装備品や燃料を消費していきます。
戦車が故障することもあるでしょう。
隊員は人間なのでお腹も空くでしょう。
また、戦闘中に隊員が負傷することもあるでしょう。
そうなると、部隊の戦闘力は低下してしまうので、そうならないようにバックアップしていくのが兵站なのです。
野外令には「作戦に対して基盤と可能性を付与する」と表現されています。

なお、陸自の兵站は補給や輸送のほか、整備、回収(壊れた武器など)、衛生、建設、不動産、労務・役務を総称したものとされています。
これだけ見ても様々な要素があり、さらには「補給」と一口に言っても、糧食もあれば各種燃料、部品、机や椅子などの備品、地図など幅が広く、全体の兵站業務をスムーズに行うのは至難の業です。
それゆえに、陸自では「大部隊運用の要は兵站」と言われています。

旧陸軍は兵站軽視?

ここで余談ですが、よく戦史などで「日本陸軍は兵站を軽視した」とか「無視した」と書かれているのを目にします。
しかし、個人的にこれにはちょっと違和感があるんですね。
当時の日本軍は今の陸自と違って外征型の軍隊。
元々資源が乏しい日本が、国外の、それも広範囲でオペレーションを行う場合、日本から補給品などを輸送しようとすると、それだけでも相当大変だということが想像できるかと思います。
さらには、いくら軍優先の世の中だったとはいえ、民需とのバランスをとることが求めらていました。
「国内で作った米や輸入した原油はすべて軍へ」は、さすがにできなったのです。
だから、現地調達が基本的な考え方。
もちろん、現地の業者にお金を払って買い上げるので、現地人の反感を買うとアウト。
それでも、糧食や燃料は何とかなったとしても、問題は弾薬のような軍専用のもの。
これは日本の工場で作って現地に届けるしかないので、輸送力と輸送間の安全確保が必須となります。
極めつけは衛生。
当時は兵站に分類されていたかは分かりませんが、現地の病院を利用するとか難しかったのではないでしょうか。
だから思うのです。
兵站を軽視したり無視する以前に、そもそも考慮が足りなかった、と。
「軽視」は「その価値や影響力を認めない」という意味。
「無視」は「認識しても問題にしない」こと。
「考慮が足りない」は「無計画」とか「行き当たりばったり」ということ。
軽視や無視という言葉には、事前に検討はされたが、他に優先することがあったからというニュアンスが感じられますが、考慮が足りない、は「そもそも考えにすらなかった」という印象。
みなさんはどう思いますか?

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兵站で大事なこと

自衛隊だけで全てを賄うのは無理!

兵站支援能力は、兵站の量、質及びその速度の相関関係で律せられるので、作戦上の要求に即応させるよう最大限努力することが重要です。
ちなみに、「兵站は国土、国民と一体となってはじめて成立する。」と書かれています。
何やら物々しい表現で、「国民を巻き込もう」的な印象を与えますが、そういう意味ではありません。
自衛隊の持つ兵站能力には限界があるので、関係機関との連携や国民の積極的協力を得る必要がありますよ、と言う意味です。
分かりやすい例として医療があります。
戦闘で負傷した隊員が多数出た場合、自衛隊病院だけでの受け入れには限界があるので、民間病院にも受け入れをお願いすることもあるでしょう。
また、石油精製施設から駐屯地にある給油スタンドまで、民間のタンクローリーで運んでもらうこともあると思います。
こういう場合に自衛隊以外からも支援を受ける必要があるので、この一文があるのです。
なお、この後に続く文には、「民需とのバランスを考慮しながら、部外力(自衛隊以外の支援能力)の可能性と限界を的確に把握しなさい」、「情勢の変化して、協力してくれている民間事業者に危害が及びそうな場合の処置を考えておき、あらかじめ対策を講じておきなさい」といったことが書かれています。

兵站の要則

兵站の要則として、以下の5つが記載されています。

  1. 先行性及び計画性
  2. 融通性
  3. 継続性及び強靭性
  4. 効率性
  5. 創造性

1〜4は何となく分かると思うのですが、個人的に大事だと思うのは5の創造性ですね。
作戦とは往々にして予定通りに進まないのが常ですが、兵站は特にそれが顕著なんです。
想定外の事態に遭遇し兵站支援がストップしてしまうと、そこで第一線部隊の作戦続行は不可能となってしまいます。
例え戦況が有利であったとしてもです。
ウクライナ戦争初期のロシア軍、最近のウクライ軍でも同様のことが起きていますよね。
想定外ということは事前に対策が練られていないということなので、そんな時でも創造、つまり全く新しい策を創り出すことが重要になりますが、誰にでもすぐにできるものではありません。
兵站支援は気持ちの問題ではなく物理的なもの。
「頑張ります」ではどうにもならず、常日頃から地頭を鍛えていないとできないことです。
私が「大事だ」と思う理由がお分かりいただけましたでしょうか。

まとめ

今回は兵站について、野外令の記述に沿って解説してみました。
繰り返しになりますが、兵站は自衛隊の持つ能力だけではどうにもならない要素も多々ある一方で、作戦の成否に大きな影響を及ぼす大事なものです。
今回の記事は軍事に特化した内容となりましたが、みなさんの参考になることがあれば幸いです。

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