ニュース解説:ウクライナ軍が最高とされる旅団を予備隊として投入〜最高の部隊なのになぜ予備?

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ウクライナ軍がアウジーイウカに予備隊投入か

2024年2月13日付のForbes JapanのWebサイトに、「アウジーイウカ救援へウクライナ軍が予備の部隊投入か 「徹底抗戦」決断の可能性」と題される記事が掲載されていました。
以下、その抜粋です。

ウクライナ軍が東部ドネツク州の要衝アウジーイウカで兵力の増強に動いている。ロシアによる冬季攻勢で現在の中心地になっているこの都市への増援に送られる部隊は、ウクライナ軍最高の旅団の1つのようだ。
陸軍の第3独立強襲旅団である。なぜこの部隊と思われるかと言えば、2月上旬時点で、東部に予備として配置されていることが確実にわかっているウクライナ軍の地上戦闘部隊は、第3強襲旅団しかないからだ。(中略)
ウクライナ軍によるアウジーイウカの兵力増強は、あらかじめ想定されていた動きではない。ウクライナ側は、アウジーイウカにとどまって戦うことを選び、それにともなう非常に大きなリスクを引き受ける決断をしたもようだ。

出典:Forbes Japan「アウジーイウカ救援へウクライナ軍が予備の部隊投入か「徹底抗戦」決断の可能性

要約すると「最高の部隊を使わずに取っておいたけど、予想外に状況が悪くなったので投入する」ということになります。
読者の皆さんの中には、「最高(最強)の部隊なら、最初から使えばよかったのに」と思われた方もいるのではないでしょうか。
また、一般的には「予備」というと「スタメンに入れなかったベンチ入りメンバー」とか、「使わない可能性が大きいけど、万が一のため一応とっておくもの」という印象があって、「本当に最高の部隊なのかな?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
しかし、ミリタリーの世界での「予備」には、非常に重要且つ困難な任務を与えられることが多く、相応の練度や優秀な指揮官が必要となるのが普通です。

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そもそも戦術における「予備」とは?

陸上自衛隊の教範「野外令」に、予備に関する記述がいくつかあります。
まず、攻撃においては「攻撃開始以降の戦勢を支配するための主要な手段」と位置付けられています。
防御では、柔軟な防御を行うために「できる限り多くの予備隊を持つこと」とされ、「予備隊の使用に関しては、予期する主要な戦況の全てに応じられるよう、あらかじめ計画する。」と書かれています。
これらのことから、予備隊には固定した任務はなく、いつ、どのように運用されるのかは戦況次第ということが分かるかと思います。

充実した装備とベテランで構成された部隊が必要

「いつ、どのように運用されるのかが明確に決まっていない」ということは、「予期される全ての任務に応じられるよう準備をしておかなければならない」ということになります。
攻撃でも防御でも、第一線で運用される部隊には具体的な任務が付与されていますので、その任務を達成できるようにひたすら訓練して、兵士一人一人が決められた動きを確実にできるようにするなど、しっかり準備して戦闘に臨むことができます。
一方、予備部隊には複数の任務に備える必要がある一方で、それぞれの行動を十分に訓練する時間はないのが普通です。
だから、少ない訓練時間でもあらゆる任務に即応できるだけの、場数を踏んだベテランで構成された部隊が必要になります。
もちろん、予備隊の指揮官も、混沌とした中で機敏に状況を判断し、柔軟に部隊を指揮でる能力が求められます。
また、予備は戦況が予期の通り進展しない、つまり極めて厳しい状況の中で、絶対に失敗できない任務を付与されるので、装備品も相応に充実させておかなければなりません。

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まとめ

ミリタリーにおける予備隊を簡単に解説しましたが、予備は決して2軍選手ではなく、むしろエース級の部隊だということがご理解いただけましたでしょうか。
ちなみに、Forbes Japanの記事には「アウジーイウカにとどまって戦うことを選び、それにともなう非常に大きなリスクを引き受ける決断をした」とありましたが、まさに虎の子の予備部隊を投入したということは、不退転の意思の表れであり、それだけ重要な局面を迎えていると推察されます。
ここでの戦況が今後この戦争の鍵を握るかもしれません。

追記

2月18日の報道で、ウクライ軍がアウジーイウカから撤退したとありました。
予備隊を投入する決心をしたとするニュースから僅か5日後に撤退してしまったこと原因について、私は以下の2つの可能性があるのではと思います。

可能性その1
予備隊を投入しても戦勢を奪回できないほど状況が悪化していた。

可能性その2
実は撤退をもっと前に決心しており、今回投入した予備は前線の部隊を安全に後退させるための、いわば掩護部隊として運用された。

いずれの可能性もあると思いますが、アウジーイウカを失ったウクライナ軍は、次にどんな戦略でロシア軍に対抗するのか、引き続き注目していきたいと思います。

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