自衛官採用率が過去最低!魅力化には「自衛隊に入れば得」をする自衛官免税/減税を導入してみては?

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過去最低の51%

ちょっと前になりますが、7月8日付の産経新聞のサイトに「令和5年度自衛官採用率が過去最低の51% 防衛省に危機感、処遇改善やAI活用など検討」という見出しの記事が掲載されていました。
以下、その抜粋です。

防衛省は8日、令和5年度の自衛官の採用人数が募集に対して51%と過去最低となったと公表した。(中略)
同省は人材確保に関する検討委員会を設置し、同日、初会合を開いた。処遇の改善や人工知能(AI)などを活用した省人化、OBらの活用策を検討し、8月下旬ごろ報告書をまとめて7年度予算の概算要求に反映させる。
5年度の自衛官採用率は4年度の66%から15ポイント低下した。1万9598人の募集に対し、採用は9959人にとどまった。任期がない一般曹候補生の採用率は69%、任期制の自衛官候補生は30%と低迷した。これまで自衛官採用率が最も低かったのは平成5年度の56%だった。(中略)
①職業としての魅力化②省人化・無人化による部隊の高度化③部外力の活用―の3点について抜本的な改革案を速やかに検討する。

産経ニュース 令和5年度自衛官採用率が過去最低の51% 防衛省に危機感、処遇改善やAI活用など検討

最近では自衛隊がメディアに好意的に取り上げられる機会も増え、芸人さんの中にも熱心に応援してくれる人がいたりもするので、自衛隊に対する好感度はそれほどは悪くはないと思います。
また、存在意義や重要性についても、昭和の頃に比べると格段に理解が進んでいるように感じます。
それにも関わらず、なぜ入隊者が減少してしまうのでしょうか?

自衛隊に入ると将来的にも損する?

入隊者が少ない理由として、一般的には「”きつい、汚い、危険”という3Kの代表的な職業だから」がよく挙げられます。
また、最近ではこれに加え、入隊後の営内での団体生活への不安や自由がなくなることへの懸念もあるようです。
確かに、入隊前は外出もインターネット利用も自分の意思で自由にできたのが、自衛隊に入った途端に制約を受け、また、周囲には四六時中他人がいるという環境は、今の若い人には受けないでしょう。

さらには、それだけ不自由な思いや苦労を強いられながらも、自衛隊の社会的ステイタスがかなり低いのも、入隊者が減少している理由として挙げられると思います。
以前、Youtubeで「バカでもなれる公務員ランキング」で堂々の1位になっていました。
こういうのを見ると、たとえ社会的に自衛隊の存在意義に対する理解が進んでも、「世間的にはこう見られているのが現実。入ると損、他の職業の方がマシ」と考えてしまうのではないでしょうか。
「バカでもなれる」=「知的レベルが低い集団」と見なされると、定年後の再就職や転職者として元自衛官を受け入れる企業も、それ相応のポストと年収しか用意できなくなるでしょう。
これは、自衛隊を卒業する人にとってはその先の選択肢がなく、あったとしても相当の年収ダウンは避けられず、且つ自分の望まない業種しかない、ということになります。
自衛官のほとんどは50代半ばの働き盛りで定年を迎えるので、その後も食いっぱぐれないのはもちろんのこと、生活の質の大幅ダウンも避けたいと思うのが自然なこと。
つまり、これからの人生設計を真面目に考えるほど入隊すると損をすると思うようになり、入隊してくれたとしても、将来不安な割には不自由を強いられることに耐えられず、自衛隊を去っていくようになるのではないでしょうか。

「入ると人生損する。長くいればいるほど損が大きくなる」が自衛隊を選択しない理由の一つにありそうです。

今と将来にわたって「自衛隊に入ると得」をする免税/減税制度はどうでしょう?

入隊者を獲得するため、今までの施策としては、初任給のアップや勤務環境の改善への取り組みがあったかと思います。
現在もこれに取り組んでいるでしょうし、良いことだと思います。
しかし、それだけでは不十分ではないでしょうか。
先ほども書きましたように、社会的なステイタスが低いと思われている自衛隊に入隊することは、将来にわたる不安を抱えることになります。
かといって、社会的ステイタスは簡単には向上しないので、何か不安を和らげる別な方策、つまり、「自衛隊に入ったら将来的にも得をする」と思わせるものが必要になります。
給与のアップや勤務環境の改善は、自衛官である間にだけ受けられる恩恵なので、トータルとして「得した」と思わせるのは難しいでしょう。

「将来的な得」となると、特別な年金制度を作って優遇するというのも一案です。
陸上自衛隊教育訓練研究本部のホームページに、「人材流出を防ぐ人事施策として、リワードペンションを導入してみてはどうか?」という学生論文が掲載されていました。
(教育訓練研究本部学生論文「雇用の流動化に起因する自衛隊の人材流出を防ぐための人事施策に係る一考察-リワードペンションの導入-」)

この論文の細部はここでは紹介しませんが、要するに「自衛隊に長くいればいるほど、将来年金で得をする」という仕組みを提案したものだと認識しています。
対象は幹部自衛官であり一般入隊者ではないものの、もちろんこれもありですね。
しかしながら、20歳前後の若者に、「65歳以上になると年金でこれだけ優遇されます。」と言っても、あまりピンとこないかもしれません。
また、現在の貨幣価値が40年後も同じとは限りません。
ですので、年金以外にも、現役の自衛官が「自分達は優遇されている」と感じられるもの必要です。

そこで「自衛官免税/減税」という制度を作ってみてはどうでしょうか。
ちょっと思いつきに近いのですが、「自衛官の所得税と住民税を免除し、消費税を大幅に軽減する」といったアイデアです。
そして、現役である間はもちろん、勤続年数に応じて退職後もその恩恵を受けられるようにするのです。
例えば、3年勤務すれば退職後3年間、10年勤務すれば退職後10年間、定年まで勤務すれば生涯にわたって免税、或いは減税されるというもの。
自衛官としての勤務歴はマイナンバーと紐づけることで管理できそうですし、消費税に関しても、マイナポータルとPayPayなどのQRコード/バーコード決済アプリとの連携で、その場で免税価格で購入できるようになると思います。
税に関わるものなので、防衛省のみならず政府全体での検討が必要になるでしょうし、そう簡単な話ではないとは思いますが、検討してみる価値はあるのではないでしょうか。

おわりに

意外かもしれませんが、旧陸軍の時代も人材確保に苦労していました。
『陸軍将校の教育社会史』(内田照幸著、ちくま学芸文庫)によると、明治後半から昭和初期にかけて、職業としての陸軍は不人気で、将校を獲得するために俸給をアップさせたり、幼年学校や士官学校の規律を緩和したりと、様々な施策が行われてきました。
また、当時の陸軍将校は社会的には中層クラスが多かったそうで、なんとなく劣等感もあったようです。
でも、そんな彼らが閲兵式で天皇を間近で拝謁すると、「自分は選ばれた人材なんだ」というエリート意識を自然に持つようになり、その意識が軍への定着の一助になったとのこと。
しかしながら、退職後の再就職の難しさからくる生活苦は改善されませんでした。
旧陸軍将校についての話とはいえ、現在の自衛隊が抱える人材確保問題にも通じるものがあるのではないでしょうか。
在職間のみならず将来にわたって得をする制度。
旧軍も解決できなかった問題を今の時代でどう解決させていくのか。
今後も注目していきましょう。

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