まさにロボコップの世界!30mm機関砲を搭載した無人戦闘車両開発の背景とその使い道

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無人戦闘車両”Type-X”

エストニアの自律システム・デベロッパーであるミルレム・ロボティクス(Milrem Robotics)社のホームページに、欧州の複数企業が参画して開発中の無人戦闘装甲車、”Type-X"に関する記事が掲載されていました。

The leading European robotics and autonomous systems developer Milrem Robotics and Kongsberg Defence & Aerospace (KONGSBERG), the leading technology and defence supplier successfully performed the first live firing of the PROTECTOR Remote Turret from the Type-X Robotic Combat Vehicle (RCV).

欧州のロボット工学と自律システムのリーディング・カンパニーであるミルレム・ロボティクスは、コングスベルク社とともに、無人戦闘車両Type-Xに搭載されたリモート砲塔「プロテクター」の実弾射撃に成功した。

 KONGSBERG and Milrem Robotics perform first live firing from the Type-X Robotic Combat Vehicle

このリモート砲塔はコングスベルク社が開発したもので、30mm機関砲が搭載されています。
陸上自衛隊の87式偵察警戒車(RCV)が25mm機関砲、89式装甲戦闘車(IFV)が35mm機関砲なので、その中間の口径ということですね。
ちなみに、この車両には50mm砲、対戦車ミサイルなどの”上物”も搭載できるほか、テザード・ドローン(有線接続で給電できるドローン)を搭載し、常続的に偵察活動をすることも可能とのことです。
記事にある動画を見ていると、「ロボコップに出てきたED209って、これが原型なのかな」と思ってしまいました。
かつてSF映画で描かれたシーンが現実化しつつあるのを感じます。

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開発の背景

このType-Xは、NRW(Nordic Robotic Wingman)という装甲無人戦闘車の開発に向けた試作車両のようで、北欧諸国、西ヨーロッパ、米国での導入が検討されているとのこと。
つまり、NATO加盟国での運用を意図して開発していることが分かります。
最近、無人化や省人化が装備品(兵器)開発で大きなウェイトを占めるようになってきましたが、その理由は言うまでもなくゼロ・カジュアリティですね。
犠牲をゼロにして目的を達成するのが一番。
でも、だからといって、戦場に一人の人間も必要ないかと言うと、実はそんなこともありません。
どうしても人間の感性で判断しなければならない場合もあります。
そもそも、戦争というものの本質が、人間の意志と意志のぶつかり合いというものである限り、「人」の存在は欠かせないのです。
だから、軍という組織は、「人」という要素を一定数維持する必要があります。
そのためには、志願者が必要で、世界的な少子化で募集対象者数が減少する中、典型的3K職場の軍を魅力的にするためには、使命の崇高さだけではなく、「安全性」も訴えていかなければならない。
そんな事情が見え隠れしますね。

想定される運用場面は?

テクノロジーが進化しても、「人」という要素が欠かせないことはご理解頂けたかと思います。
では、この無人戦闘装甲車をどう運用するのか?
再びミルレム・ロボティクス社の記事を見ると、以下の一文があります。

The NRW’s purpose is to support Main Battle Tanks (MBT) and Infantry Fighting Vehicles (IFV) like the Leopard 2 or CV90. 

KONGSBERG and Milrem Robotics perform first live firing from the Type-X Robotic Combat Vehicle

開発目的は、人間が乗った戦車や装甲戦闘車を支援すること。
つまり、現行の戦車や装甲車と組み合わせて運用するということです。
記事には書かれていませんが、おそらくサーマルセンサー(温度の違いで物体を識別するセンサー)などの、人が感知できないものをカバーする機能は搭載されていると思うので、側面警戒には使えそうな気がします。
でも、武装が30mm機関砲なので、敵の戦車を撃破することはできません。
また、有効射程はせいぜい2,000m程度。
6,000m以上離れた位置から射撃する、敵の攻撃ヘリコプターを撃破するにもやや厳しいスペックです。
なので、これは推測ですが、人間が対処できない正面を一時的に制圧するのが、この無人戦闘車両に一番求められていることではないでしょうか?
30mm機関砲なら、敵の戦車を撃破できなくても、視察装置や転輪など破壊して敵の動きを一旦止めて、対応の暇(いとま)をつくることはできます。
また、攻撃ヘリコプターを追い払うことはできるかもしれません。
「人間の目の届かないところを警戒し、対処の猶予を与えるために運用」
これが、この無人装甲戦闘車が活躍する場面かもしれませんね。

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