ドイツが新戦車KF51「パンター」を発表 自動装填装置による省人化は乗員の負担を増大させる?
画期的な機能を搭載したKF51
6月13日にパリで開催された国際兵器見本市「ユーロサトリ」で、ドイツのライメンタル社は現行のレオパルド2の後継となる新戦車「KF51」、通称「パンター」を発表しました。
この戦車には130mm戦車砲という、ロシアの125mmを凌ぐ、おそらく現行では世界最大口径の戦車砲を搭載しているのが特徴。
そのほかにも様々な画期的な機能があるようです。
以下、海外の「1945」というサイトに掲載された記事からの抜粋です。
The tanknology is impressive here indeed, and it starts with the smoothbore 130mm “future gun system” that outclasses the Leopard 2’s 120mm model. The auto-loading gun can fire sabot rounds and airburst munitions. The new gun also has a range 50% greater than the older 120mm. The gun works in tandem with a launch system for the HERO 120anti-tank loitering munition drone.
出典:Meet Germany's Newest Tank, The KF51 Panther. Russia will Hate it.
"tanknology"なる造語?もありますが、レオパルト2の120mm戦車砲を超える130mmの滑腔砲、「将来砲システム」を搭載しており、自動装填装置付きの戦車砲は、徹甲弾と空中破裂タイプの砲弾も発射できるとのこと。
この新しい戦車砲の射程は、120mm戦車砲に比べ50%増大ということなので、推定3,000m程度だと思います。
直射火器としては、かなりの長射程ですね。
さらには、徘徊型対戦車ドローンのHERO120も発射できるという優れものです。
このほか、トップアタックにも耐えられる上面装甲もあり、まさに「最強」と言える性能だと思いますが、個人的に一番注目したのは自動装填装置の搭載です。
これにより、装填手は不要となり乗員は3名(車長、砲手、操縦手)になります。
一見、省人化が図られ効率的になったように見受けられますが、実は乗員にとっては負担が増えてしまうかもしれないのです。
乗員数減の影響は地味に大きい
従来の4人でやっていた作業を3人で
戦車部隊といえば、戦車に乗って戦っている姿を想像するかと思いますが、部隊行動している間は乗っていない時間も意外と長いです。
例えば、集結地に入った後は宿営準備を行いますが、この時に敵の斥候から見つからないよう戦車を偽装します。
偽装は通称”バラキューダ”と呼ばれる偽装網を、戦車をすっぽり覆うように展張させて行うのですが、偽装網同士を結び合わせたり、支柱を立てたりする作業は、二人一組で行わないとなかなかうまくいきません。
僕が小隊長の頃は74式戦車で乗員が4人だったので、2組に分かれて作業していたので色々テキパキとできていました。
でも、90式戦車が導入され3名編成になってからは、二人一組の作業が終わるまではもう一人が待っていたり、仕方ないので別のことをしたりで、バラキューダの展張だけで相当時間がかかるようになりました。
また、集結地は自隊で警戒しなければならないので、中隊の警戒ポストに警戒員を差し出すと、偽装は二人で行うことになってしまいます。
これがけっこう大変なのですが、もっと悲惨なのは指揮官車の乗員。
小隊長が命令受領に行き、もう一人の乗員を警戒につけると、偽装作業は一人でしなければならず、「作業は進まない、疲労は溜まる」で本当に大変でした。
このほかにも、宿営態勢が完了するまで、無線傍受をローテーションでさせることもあり、また、各車毎に天幕(テント)を立て、戦車から有線(電話)を引っ張ってきたり、糧食受領や燃料補給(ドラム缶から手動ポンプを使って行います。)もするので、乗員が少なくなると、全ての作業が完了する頃には明け方を迎え、すぐに撤収して出発準備と休む暇がなくなってしまいました。
戦闘行動中にも支障あり
戦闘行動中に最も困るのは、弾薬の装填不良や無線機の不具合です。
こんな時、74式戦車の場合は装填手が対応してくれ、車長と砲手は戦闘に集中することができました。
でも、3人編成の90式戦車で砲弾の装填不良が起きた場合、砲手か車長は一旦席を離れて対応しなければなりません。
(故障排除中も戦車を指揮する必要があるので、多くの場合は砲手が対応しますが。)
また、戦闘間の警戒も、装填手が入れば、車長と砲手が見ていない方向を警戒させることができたので、安心感がありましたね。
特に対空警戒では、装填手はなくてはならない存在でした。
戦車の省人化は関連装備の改善等とセットで
戦車の省人化が及ぼす、マイナスの影響についてご理解頂けたかと思います。
でも、自動装填装置があれば装填速度が速くなり、また、戦車砲の口径増大に伴う弾薬重量の増大にも対応でき、利点があるのも確か。
この省人化を機能させるためには、宿営資材を乗員一人でもできるようなものに改良するとか、簡単な故障排除は自動化したり、警戒レーダーとかセンサーを搭載するなど、関連装備の改善または追加とセットで行う必要があると思います。
また、宿営地の警戒を無人化するシステムを導入するとか、警戒や天幕設営支援など、マルチな支援を行う小部隊を新たに組織するなど、人が減ってもワークロードが上がらないような処置が必要です。
今回のKF51の導入に伴い、このような改善や処置があるかは不明です。
おそらく輸出もされると思うので、ドイツのみならず他の国での評価がどうなるか?
注目しましょう。