できるリーダーを目指して:陸自のリーダーシップ 部下と一体となって任務を完遂するために必要な「統御」

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統御とは

組織のリーダーである指揮官の最高の責任は、「任務の完遂」であることを前回の記事で説明しました。
(その記事はこちら→「陸自のリーダーシップ 指揮官とは?その権限と責任、必要な心得」)
今回は、その任務の完遂のために重要な要素である「統御(とうぎょ)」について説明します。

「統御」とはそもそもどういう意味でしょうか?
辞書で調べると、「全体をまとめて支配すること。思いどおりに扱うこと」と書かれています。
何となく威圧的な印象を受けてしまいますね。
でも、陸上自衛隊の戦術の教科書である野外令に記されている「統御」は、これとはちょっと趣が異なります。

統御の目標は「任務の完遂」

野外令では、「統御の目標は任務の完遂」とされています。
任務を完遂するためには、指揮官だけがしゃかりきに頑張ってもダメです。
部隊(部下)と一体となって、一つの目標に進んで行かなければなりません。
なので、部隊指揮の基盤として良好な統御が不可欠なのです。

部下自らが積極的に行動するよう感化

統御と似た言葉で「統率」というものがあります。
自衛隊での統率は、辞書にある通り「多くの人をまとめて率いること」を意味します。
これは、組織の牽引役である指揮官のリーダーシップのイメージそのものですが、「統御」は、組織としての目的達成のため、部下に積極的に協力するよう感化を与えることを意味します。
つまり、「チームの目標達成のため何か貢献したい!」とか、「もっと自分にできることはないか?」と、部下自身が組織全体のために協力したい気持ちになるように仕向けることです。

一つの目標に向かわせるには

部下が一つの目標に向かうか否かは、指揮官の影響力次第と言っても過言ではありません。
統御とは、この影響力を行使する術(すべ)であり、これには「強制的なもの」と「理解的なもの」、「その混ぜ合わせ」があります。
強制的なものとは、自衛隊では「威圧統御」と言います。
これは、指揮官に対する畏怖の念から、部下が積極的に行動しようとするものです。
ただ、パワハラとは全然違うのでご注意を。
指揮官が放つ独特のオーラ、妥協なき信念、卓越した能力を部下に示すことにより、「この人に従えば間違いない。」と思わせることです。
もう一つの「理解的なもの」は、自衛隊では「心服統御」と言います。
指揮官の個性や人柄、部下に対する思いやりや理解力で魅了し、「この人のためなら」と部下が積極的に動くようになることです。
どちらが優れているとかはありません。
ただ、「強制的よりも理解的な統御こそ真の統御」とよく言われます。
でもこれは、日本人のメンタリティーによるものではないのかな、と言うのが個人的な考えです。

部下に迎合するのはダメ

「強制的よりも理解的こそ真の統御」とは言え、迎合的な温情主義で部下の歓心を買うのは誤りです。
部下についつい甘い態度をとったり、部下が疲れているからといって安易に妥協したり。
これでは、任務の完遂ができないことはもちろんのこと、最悪、組織が崩壊してしまうといっても過言ではありません。
人は安きに流れるもの。
リーダーが部下に気に入られようと、安易な妥協を繰り返すことは統御とは全く異なります。
では、どうやって部下を心服統御に導くか。
これには全く回答はありません。
指揮官自身の性格や経験値、部下の特性によって、その手法は全く異なるからです。
基本的にはお互いのコミュニケーションが鍵とはなりますが、そもそもどうそれを実践するかは時代によっても異なります。
以前はよく「飲みニケーションが大事」と言ったものですが、今の若い人はお酒を飲まない人が多く、また、仕事が終わった後はプライベートな時間を大事にする傾向にあると思います。
「こうすればいいよ」というものはなかなかありませんが、自分が現役の自衛官だった時に心掛けていたことは、組織全体に語りかける時は自分の信念を強調し、個々の部下に対しては、その部下の性格や考え方の傾向を考慮しながら語りかけるようにしていました。
これで心服統御ができていたかは、正直分かりません。
常に試行錯誤だったので。
こればっかりは、指揮官の宿命のような気がしますが、皆さんのご参考になれば幸いです。

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