できるリーダーの条件:陸自のリーダーシップ 指揮官とは? その権限と責任、必要な心得

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陸上自衛隊の教範(教科書)である野外令には、戦術の原理原則的なことの記載がほとんどですが、「指揮」に関することも記載されています。前回は幹部自衛官全員が暗唱でき(るはず)、どんなポストに就いても適用できる普遍のフレーズ、「指揮の要訣」について解説しました(その時の記事はこちら→「いつの時代も色褪せない、様々な業界でも適用ができる「指揮の要訣」」)。
今回は「そもそも指揮官とは何か、どんな権限と責任があるのか」と「必要な心得」について解説したいと思います。

指揮官とは

指揮官、これはリーダーと読み替えてもいいかと思いますが、どんな人のことを指すのでしょうか?
何となく、想像はつくかと思いますが、陸上自衛隊では、「任務を遂行するため、指揮権を行使して指揮下部隊を運用する人」とされています。
会社風に読み替えれば、「業務目標(売上など)を達成するために、職務上の権限の範囲で配下の人又は部署を動かす人」という感じでしょうか。
余談ですが、元自衛官からすると、会社員の場合はこの「指揮権」というものが曖昧な気がします。
例えば、何か部下に仕事を振るときに、「〇〇さん、これ、お願いできますか?」と依頼口調になりますよね。
でも、自衛隊では指揮官固有の権限として指揮権が与えられており、また、部下隊員は「その職務の遂行に当たっては、上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」と自衛隊法に規定されています。
なので、指揮権を使って部下に何かを命ずるときは、厳格に「〜せよ」と言わなければなりません。
お願いごとではないので、「やるかやらないか?」の選択肢は部下にない訳です。
会社でこんなふうに言ったら、皆さんドン引きですね(笑)

好き勝手にできる訳ではない

指揮権を行使する具体的なやり方は、命令を発して部下や部隊を動かすのですが、当然のことながら何でも好き勝手に命じて良い訳ではありません。
野外令からちょっと外れますが、陸上自衛隊服務規則には「発令者(命令を出す人=指揮官)は、いかなる場合においても法令及び上官の命令に反する命令 を発し、又は自己の権限外にある事項を命令してはならない。」と規定されています。
例えば、「個人的な買い物を部下に命じて使いっ走りさせる。」、なんて権限外のことなので命令することはできません。
自分が命令できる範囲を理解するために、まずは自分の仕事に関係する規則(法令)、上長から指示されたこと、そして自分の役割や責任をしっかり分析する必要があります。

指揮官の責任

指揮権という強力な権力を持つ指揮官ですが、この権限とセットで「相応の責任」がついてきます。
陸上自衛隊の場合、「指揮官は部隊の行動について全責任を負う」とされています。
もし、組織としての目標を達成できなかった時に、「あいつが失敗したから」なんて見苦しい言い訳はできないのです。
仮に原因が部下のミスにあったとしても、大事な場面でミスしないように、常日頃から部下を指導して鍛えてこなかった、あるいは、実行をしっかり監督していなかった指揮官の責任、ということになります。
ちなみに、指揮権は委任できることになっています。
連隊長の下には副連隊長がいたり、中隊長の下に副中隊長がいますが、この人たちに権限を委任することができます。
しかし、例え他の人に一部の指揮を任させたとしても、その任せた部分の責任を逃れることはできません。
そこで起きたことの全ては指揮官の責任です。

指揮官が負う最も大きな責任

ところで、指揮官が負う責任の中で、最も大きいものは何だと思いますか?
それは「任務の完遂」です。
これは指揮が的確でないと難しく、けっこう重い責任です。
陸上自衛隊では、着任したばかりの部隊長が抱負を語る場面がありますが、ほとんどの人が「任務の完遂」を口にしますね。

指揮官として大事な心得

これは野外令には記載がありません。
自衛隊の中でも、「何が大事が」と聞かれた時の答えは人によってまちまちです。
「指揮官、心得」をネットで調べると、色々な人が色々なことを言っています。
つまり、決まったものがないということですが、僕の経験からは、「最後は自分で決め、実行していく勇気」が指揮官として一番大事な心得だと思います。
指揮官にはスタッフがいたり、部下がいます。
彼らから様々な意見が上がってきますが、「どうするか」を決めることができるのは指揮官のみです。
でも、指揮官と言えども人間。
「どうするか」を決心した後で、「やっぱりあっちにしておけば良かったかな」と迷うこともありますが、その気持ちを顔に出してしまうと、部下たちも迷ってしまいます。
なので、一度決心したことを敢然と実行していくことが、指揮官の心得で一番大事なことだと思います。
ただし、「明らかな間違いををやり続ける」という意味ではないのでご注意を。

まとめ

指揮官は指揮権という強力な権限で、部下に実行を命じ、そして任務を完遂することが最大の責務。
そして、最後は自分で決めてやり抜く勇気を持たなければなりません。
頭の中で理解できていても、これを実行しようとすると、その難しさを実感することもありますが、それ故にやり甲斐も大いにある職務だと思います。
皆さんのご参考になれば幸いです。

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