できるリーダーを目指して:陸自のリーダーシップ 様々な業界でも適用できる「指揮の要訣」

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指揮の要訣とは

「指揮の要訣」とは、陸上自衛隊の教範(教科書)である野外令の、「指揮」という項の中に記載されているもので、その内容は以下の通り。

指揮の要訣は、指揮下部隊を確実に掌握し
明確な企図の下に適時適切な命令を与えてその行動を律し
もって指揮下部隊をしてその任務達成に邁進させるにある。
この際、指揮下部隊に対する統制を必要最小限にし、自主裁量の余地を与えることに留意しなければならない。
指揮下部隊の掌握を確実にするため、良好な統御、確実な現況の把握及び実行の監督は、特に重要である。

比較的に平易な表現で書かれているのではないでしょうか。
そもそも野外令とは、攻撃や防御といった戦術の原理・原則を説くものですが、その中にあって、この「指揮」に関する記述は、ちょっと異質なものです。
ちなみに、陸上自衛隊の幹部自衛官は、幹部候補生学校時代にひたすらこのフレーズを全文暗記させられます。
そしてその後も、初級幹部時代(3等陸尉〜2等陸尉)はもちろんのこと、1等陸佐になっても、様々な場面でこの「指揮の要訣」に遭遇します。
それだけ、指揮(リーダーシップ)のエッセンスが凝縮されたものなのでしょう。

その意味するところ

パッと読んで「よく分かった!」という気になってしまいますが、実はけっこう奥深いものです。
それぞれ分解して解説します。

指揮下部隊を確実に掌握

この部分はリーダーシップの要だと個人的には思います。
指揮下部隊は、「自分の配下にある部署」とか、「自分の部下」と読み替えていいかと思います。
これを確実に掌握する、とはどういうことなのか。
そもそも、「掌握」という言葉には「支配下に置く」という意味があります。
つまり、目指すべき方向や達成すべき目標に向かって行くため、リーダーの意図通りに動く組織を作るということですね。
陸上自衛隊の場合、新しい指揮官の着任式で、部下隊員を前に必ず最初に「只今から、当連隊の指揮を○○1佐が執る」と宣言することで、全員が「この人の配下になった」と認識できます。
しかし、たとえ軍と言えども、これで人間を支配することはできませんし、そもそも人の支配などやってはならないこと。
なので、強引に支配するのではなく、部下が自然とついてくるように仕向けることが大事となります。
が、これが難しいんですよね〜
陸上自衛隊の中でも試行錯誤するところですが、一つ言えるのは、まずは「相手のことをよく知る」ということ。
それは人であっても組織であっても同じです。
部下又は配下にある部署の能力、性格や個性、価値観、抱えている問題、願望、などなど。
これを把握するためには、常日頃からよくコミュニケーションを取ることが大切。
そして、部下(部署)の特性を把握できたら、その個人(部署)へのアプローチの仕方を考えて実践する必要があります。
これも定型はありません。
「この人にどう説明すれば、本人が自発的に目標に向かって行動するようになるか?」を試行錯誤するのです。
ちなみに、「掌握」は最初にやったら終わり、ではなく、その部署のリーダーである限り、ずっとやり続ける必要があるということを意識してもらえれば、と思います。

明確な企図のもと適時適切な命令を与える

このフレーズの中で特に大事なのは、「明確な企図のもと」の部分です。
僕が現役の自衛官だった頃も、上司からよく「”明確な企図”を忘れるなよ!」とよく言われました。
リーダーとして、「何のために、どうしたい」を明示しなければ、部下たちは「ただ言われたことをするだけ」になってしまい、得られる成果は最小限か、最悪、期待値以下になってしまいます。
これから命じること(指示すること)には、こんな狙いがあって、自分はどうしたい、ということをしっかり含ませることをお忘れなく。

統制は最小限にして自主裁量の余地を与える

マイクロ・マネジメントはダメですよ、ってことです。
「そんなの分かってるよ」という声も聞こえてきそうですが、日本人のメンタリティーなのか、案外難しいように思います。
「俺はその業務の隅々まで知っているから、ここはこうして、その後こうして・・・」という上司が非常に多いです。
また、「上司としてなるべく細かく示さないと、部下は迷って仕事が進まないかも」という思いが強いのかも知れません。
陸上自衛隊でも、マイクロ・マネジメントの上司はたくさんいます。
でも、それは組織にとって不幸なこと。
部下は考えることをやめてしまうので、いつまでたっても成長しません。
また、能力の高い部下だと、うんざりしてやる気を失くすこともあるでしょう。
人に任せることは勇気のいること
それができるのが、良きリーダーと思うのですが、丸投げもダメ
どうバランス取るかが肝です。

良好な統御、現況把握、実行の監督

統御とは、部下が自らが進んで指揮官の目標達成のために動くようにすることです。
別記事で解説していますので、そちらを参考にしてください。
(リンクはこちら→「できるリーダーを目指して:陸自のリーダーシップ 部下と一体となって任務を関するするために必要な「統御」」)
これは小手先のテクニックでどうこうできるものではなく、リーダーの全人格を持って行うもの。
人間としての修養が必要です。
そのほか、現状どうなっているのか、うまく物事が進んでいるのか確認し、何か問題があれば必要な指導を行う。
ここまで読めば、この部分の最初に「指揮下部隊の掌握を確実にするため」とある理由がわかりますね。

どう使うかはその人次第

いかがだったでしょうか。
短いフレーズの中に、様々な意味が込められていることが理解できたかと思います。
でも、理解できたからといって、誰でも同じようにリーダーシップを発揮できる訳ではありません
指揮の要訣は、これを実践する人に委ねられている、と言うことです。
う〜ん、奥深い。

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できるリーダーを目指して:陸自のリーダーシップ 様々な業界でも適用できる「指揮の要訣」” に対して2件のコメントがあります。

  1. manabu0945 より:

    指揮の要訣を入れたらヒットしました。
    私も陸自OBです。
    退職時、自衛隊に関するものはすべて廃棄しましたが、企業に就職して自衛隊での知識、技能のすべてが役に立っています。改めて自衛隊には感謝しています。
    指揮の要訣は、自社の社長にも説明しています。
    私は、CGSを出ていませんが、自衛隊生活の半分を幕僚として総監部で勤務しました。
    自衛隊で受けた教育は、民間企業でも十分活用できることを実感しています。
    ミリたく様の今後のご活躍をご祈念致しております。

    1. militac-san より:

      manabu0945様
      コメントありがとうございます。
      励みになります。
      サラリーマンとなって改めて教範を見返すと、けっこう良いこと書いていることに気づきます。
      今は国会図書館onlineで教範を閲覧できます。
      かなり古いものですが普遍的なこともたくさんありますよ。
      ぜひ一度ご覧になってください。
      引き続き、皆さんの役に立つような記事を執筆していきますので、よろしくお願いします。

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