ウクライナ情勢〜ロシア兵の戦場離脱はなぜ起きる? あなたの会社でも起こり得る「士気の低下」とその要因

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ロシア軍脱走兵が増加

最近、ウクライナ軍は反転攻勢に転じ、多くの失地を回復させているようです。
報道は常に断片的なので、これをそのまま鵜呑みにするのはダメですが、様々なニュースから一部のロシア軍が劣勢にあるのは間違いないようですね。
そんな中、CNNのサイトに気になる記事が掲載されていました。
以下、その記事の抜粋です。

ウクライナ軍参謀本部は9日、同軍が反転攻勢を進める南部ヘルソン州でロシア軍の脱走兵が増えていると主張した。最新の戦況報告で述べたもので、背景にはロシア軍が被った相当な規模の損害や戦う意欲の喪失などがあると指摘。「占領軍のモラルや精神状態は大きく悪化しており、脱走兵の人数も増えている」と続けた。

出典:反攻の南部ヘルソンでロシア軍脱走兵が増加、ウクライナ軍

このほかにも、「軍服を捨てて私服に着替え、市民に紛れて逃走」のニュースもありました。
ロシア軍の中では統制を失っているような部隊が存在するようです。
これらは兵士の士気の低下が原因だと思われます。
そして、その士気の低下を招く要因を考察すると、実は戦場だけではなく、会社でも十分に起こり得ることが分かります。

そもそも「士気」とは?

以前の記事で「士気の根源は指揮官にある」という主旨の記事を書き、その中で、陸上自衛隊における「士気」の定義について記載しましたが、復習を兼ねて再度記載しておきます。
士気とは「任務遂行の原動力であり、自分の仕事を積極的に行って、組織の一員として全体の任務達成に参加しようとする精神状態」とされています。
つまり、組織の一員であるという強い自覚と、自分の仕事をやりきろうとする強い意志の表れと理解して頂ければ良いかと思います。

士気の低下はなぜ起きる?

では、ここからが本題です。
士気の低下を招く要因は何でしょうか?
最近の記事で見かける「逃走」や「統制を失う」というキーワードから考察してみます。

士気低下の要因その1:恐怖

戦闘に対する恐怖心が任務遂行意欲に勝るから、ロシア兵は自己保存の本能が働き、安心・安全な場所を求めて戦場から逃走するのだと思います。
誰だって生死をかけた戦闘は恐ろしいのですが、士気が高い状態だと、その恐怖心を乗り越えようとするものです。
では、恐怖に負ける人と、それに打ち勝てる人の差は何でしょうか?
それは自らや組織に対する自信と信頼感の差です。
軍の場合、徹底した訓練でこれを生み出すことができます。
個人的な戦闘技術から始めて部隊規模での訓練へと移行し、これを繰り返し行うのですが、その中で、兵士は自分の技量に対する自信、同僚に対する信頼感を深めていきます。
今回のロシア兵の場合、自分に自信がないのはもちろんのこと、組織を信頼できるほどの訓練が施されていなかったと推測できます。
もしかしたら、ロシアは初期の作戦失敗で多くの部隊を失ったため、臨時編成の部隊を多数戦場に駆り出しているのかもしれません。
そうなると、お互いよく知らない者同士で、部隊訓練も不十分なまま戦地に赴くことになるので、恐怖に打ち勝つことはなかなか難しいでしょう。

士気低下の要因その2:欲求不満

ウクライナ軍は長射程の火砲で、ロシア軍の兵站施設を破壊しています。
そうなると、燃料、糧食、弾薬、部品などの必要な物資が前線に届かなくなります。
そもそも、ロシアは短期決戦を意図していたので、兵站の準備が不十分であったと囁かれていますが、兵站施設の破壊はこれに追い討ちをかけるようなものですね。
いくら兵士が戦う気満々でも、戦車が動かない、弾が撃てないとなると、徐々にやる気を失っていくことは容易に想像できるかと思います。
また、兵士の士気を維持する上で一番肝心な糧食(食事)の供給が滞るとなると、欲求不満は爆発寸前。
娯楽のない戦場での一番の楽しみは食事。
それが奪われると、気持ちの切り替えができなくなり、士気は著しく低下します。
戦いたい(任務を遂行したい)という欲求、空腹を満たしたいという欲求。
その両方が満たされない不満が、命令無視による無統制状態を作り、兵士の逃走を招いていると想像できます。

あなたの会社は大丈夫?

「これって戦場で起こる話で、会社では関係ないよ〜」と思った方、ちょっと待って下さい。
今回挙げた2つの要素は、会社内でも存在するかもしれませんよ。
まず、「恐怖」。
これは、自分の能力と周囲への不信感に原因があると解説しましたが、平たく言うと、「自分がどう振舞っていいのか分からない」、「周りの人がよく知らない人だらけ」であることと同じです。
「自分がどう振舞っていいか分からない」は、「プレッシャーの大きいプレゼンを丸投げされた」と言う場面を想像すると理解しやすいと思いますが、ほかにも、「社内の事務手続きが確立されておらず、人によってやり方が異なる」、「Aさんに教えてもらった通りにやったけど、提出先の部署からお叱りを受けた。」と言うのも該当します。
プレゼンであれば、上司や先輩が資料作成のポイントを示して作成させ、その内容を指導して発表の練習を時間が許す限り行うことで対処できます。
社内手続きであれば、誰もが理解しやすいように整理されたマニュアルを、いつでも見れる場所に保管しておくことで、無用な自信の低下を避けることができるようになるでしょう。
周囲への不信感は、例えば頻繁な体制変更で起こり得ます。
社内の都合でどうしても体制変更を余儀なくされた場合は、「キーパーソンは残しておく」とか、一度に全てガラガラポンにするのではなく、「半分だけ入れ替えていく」とかに留意する必要があるでしょう。
次に「欲求不満」。
これは給与への不満、昇任に対する不満もありますが、もっと身近な事例で言うと、職場の空調が悪いとか、必要な消耗品(ボールペンやコピー用紙など)がいつも欠品というのも該当します。
「職場に談笑するスペースがない」というのもあるでしょう。
些細なことのようですが、これが蓄積していくと大きな欲求不満へとなったいきます。
社員へのアンケートで、職場環境の改善事項を探ってみるのも一案ですね。

まとめ

戦場で起きていることは非日常的なことが多いのは事実です。
しかし、戦場も会社も人間の営みがベースにあることを考えると、戦場で兵士が抱える問題が、実は会社にも存在するということに気づくかもしれません。
戦場では兵士の脱走、会社では離職率の増加。
防ぐための対策も、根本にあるものは案外同じかも?
そんな視点を持ってニュースを見てみてはいかがでしょうか。

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