ゲリラ戦は人からドローンへ〜毛沢東の遊撃戦を彷彿させるウクライナのドローン戦法

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ウクライナのドローンによるゲリラ戦

最近、欧米各国がウクライナに戦車を供与すると発表し、そちらに注目が集まっています。
これに関し、僕もいくつか記事を書いてきましたが(過去記事のリンクを最後に貼っておきます)、今回注目するのは、ドローンを使ったウクライ軍の戦い方。
一般の報道では、「ドローンで攻撃した」程度の説明しかありませんが、Youtubeには、ウクライナ軍がどのようにドローンを使って攻撃したのか、実際の映像で確認することができます。
それは、小型ドローンを使って、ロシア軍の戦車などの直上に小型の爆弾を投下するというもの。
おそらく手榴弾程度のものなので、戦車が派手に大爆発したりとかはあまりないです。
歩兵の陣地に落としても、爆発した煙の中から逃げ出す兵士の様子が映っているので、殺傷能力は低いと思われます。
でも、ロシア軍兵士に与える心理的な影響は大きのではないでしょうか。
後方の集結地や、今後の戦いに備えて陣地構築している地域は、第一線に比べて安全だという意識があるので、そこまで張り詰めた雰囲気はないのが普通。
ところが、不意に爆発が起きる。
しかも、砲弾と違って飛翔音のような前触れもなく、さらには最初からピンポイントで攻撃を受ける。
ドローンは目視で見つけることが難しく、全くの不意打ち的に攻撃することができるのが特徴。
そして、第一線だけではなく、部隊の集結地、兵站施設など、前線とか後方という概念に関係なく、ドローンが飛行できる場所ならどこでも爆弾を投下できます。
サーマルセンサー搭載のカメラがあれば、夜間でも攻撃可能でしょう。

大きな損害を与えることはできなくても、神出鬼没のドローンは、時間と場所に関係なく連続して打撃を加え、物心ともに敵を消耗させていくことができます。
まさにゲリラ戦ですね。
かつては人が行っていたことを、ウクライナ軍はドローンで行っているように感じます。
そしてこの戦い方は、毛沢東の遊撃戦論を彷彿とさせるものです。

毛沢東の遊撃戦論とは

正しくは、「抗日遊撃戦争の戦略問題」と言います。
中公文庫から「遊撃戦論」というタイトルで日本語版が出版されているので、興味のある方は一度読んでみて下さい。

「抗日」という名が示すようように、日中戦争時代の日本軍との戦いをベースに記述されたものです。
詳しい説明は省略しますが、今回のウクライナでの戦いを見ていて、次の2点が毛沢東の理論と合致するように感じました。

  1. 時間の経過に従い優劣が逆転
  2. 遊撃戦から運動戦へ

まず1つ目について。
遊撃戦が主体となるような状況は、敵に対してこちらが不利な場合がほとんどです。
その中で大事なことは、不利な状況から均衡な状態に移し、そして均衡な状態から優勢な状態へと移行させること。
これを実現するための手段は様々記述されていますが、僕が個人的に重要だと思ったのは「敵を疲弊させる」ということですね。
毛沢東は、敵がどんなに強くても、襲撃を繰り返せば弱くなっていくと考えていました。
つまり、敵に休む暇を与えることなく打撃し続ければ、やがて敵は疲弊し、そして弱体化していくということ。
これにより、劣勢な状態を均衡な状態に変えていけると思います。
2つ目は、当初は非正規軍による遊撃戦主体の戦い方であったところを、徐々に正規軍による戦いへと転換していくことを指しています。
どんなに遊撃戦で敵を疲弊させ、均衡な状態に持っていくことができても、決定的な勝利を獲得することは難しい。
そこで、正規軍、つまり、主力部隊による戦いが必要になるということです。

ウクライナはドローンで戦勢を変えた?

ウクライナ軍のドローン戦法は、まさに遊撃戦を具現化したようなものではないでしょうか。
ロシア軍は24時間、ドローンによる襲撃を警戒しなければならず、心身ともに疲弊していったと想像します。
これにより、戦況はウクライナ軍劣勢から均衡へ。
ここ数ヶ月、戦線が膠着状態にあるのはその証拠ではないでしょうか。
今後もしこれが実証されれば、「ドローンによる遊撃戦」という新たな戦い方が体系化されるかもしれませんね。

今後の展開は?

毛沢東が述べているように、遊撃戦は補助的なもので決定的な戦果を獲得するものではありません。
よって、正規戦への発展が必要となるのですが、そこに欧米諸国から供与された戦車などの、最新の兵器を装備した部隊が運用されるものと推測します。
今後、ウクライナ軍は自ら作為した有利な環境の下、一挙に攻勢に出て、戦争を終結へと導くシナリオを描いているのかもしれません。
引き続き注目しましょう!

過去記事→ニュース解説:レオパルドにチャレンジャー、供与された戦車は乗員の訓練だけでは戦力化はできない?!

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