リーダーには「嫌われる勇気」が必要なときもある〜「嫌われる=パワハラ」ではありません

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アドラー心理学を応用したリーダー論:叱らない、ほめない、命じない。

最近、「叱らない、ほめない、命じない。あたらしいリーダー論(日経BP)」という本を読みました。
この中で語られているリーダーシップは、アドラー心理学に基づいたもの。
簡単に説明すると、リーダーと部下は対等であり、リーダーは「力」で部下を率いるのではなく、「言葉」によって協力関係を築くという、「民主的なリーダーシップ」を説いていて、決して叱ってはならず、ほめても命じてもダメといもの。
「嫌われる勇気(ダイヤモンド社)」を読んだことがある人なら、スッと入ってくる内容だと思います。
著者の岸見氏は「嫌われる勇気」の著者でもあるので、当然といえば当然ですが。
この本は2部構成になっていて、第1部は管理職になりたての悩める「わたし」と、先生との対話で、「嫌われる勇気」の記述様式を踏襲したもの。
第2部は「叱らない、ほめない、命じない」を実践している実在の起業家との対話となっています。
第1部はなかなか面白くて、若手管理職が持ちそうな悩みに一つ一つ答えるような形式なので、「あー、その悩み分かる〜」と思うことも多々ありました。
中でも興味深かったのは「ほめる」ことの弊害。
そもそも、「ほめる」というのは上から目線で部下を見ていることのあらわれだそうで。
部下も「ほめられらる」ことが目的化してしまい、ほめられそうなこと以外しなくなるので、自分自身を成長させる意識が希薄になるとのこと。
確かにそうかもしれません。
この本全般を通じて語られる、「上司と部下は職務上の役割の話であって、人間関係の上下ではない」というのは、業種に関わらず管理職として大事な心構えだと思いました。

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リーダーが嫌われる勇気を持つとパワハラ?

一方で、気になる点もありました。
悩める私からの「上司も嫌われる勇気が必要では」との問いかけに、先生が「上司の嫌われる勇気はあまりいいことが起きない」と回答する場面がありました。
「部下に嫌われてでも、言うべきことを言わないといけない」と思うリーダーはパワハラをするし、部下の言葉に耳を傾けない可能性があるとのこと。

でも、本当にそうでしょうか?
第2部の起業家との対話の中では、著者も「上司の嫌われる勇気」をある程度認めているような発言もありましたが、第1部だけ読んだ人には、「上司の嫌われる勇気は悪(あく)」と伝わりそうな気がします。

上司の嫌われる勇気とは、果たして本当にパワハラになってしまうのか?
ここで、ミリタリーの観点から上司を指揮官に置き換え、その仕事上の役割を明らかにし、「嫌われること」について考えてみたいと思います。

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リーダーの重要な役割は「決める」こと

幹部自衛官だった経験から、上司=リーダーは「指揮官」と読み替えることができると思います。
指揮官を英語で言うとCommanderなので、厳密にはLeaderとは異なるのですが、ここではとりあえず上司の役割を明らかにすることが目的なので同義として扱います。
自衛隊において、指揮官(上司)と部下隊員の決定的な違いは何かと言われると、「決めることができる人か否か」ということに尽きると思います。
部下は指揮官に対して意見具申(意見を述べること)はできます。
また、指揮官ではなくても、みんなで話し合った内容を取りまとめて一案にし、それを実行するようみんなにお願いすることもできます。
でも、意見がまとまらない時や、やり方についていくつかの選択肢があった時、どうするかを決めることができるのは指揮官のみです。
指揮官は決心をし、それを部下隊員に示し、全員を決めた方向に引っ張っていくことが大きな役割。
その中で、「部下隊員に示す」は幕僚による命令伝達、「全員を引っ張っていく」は副指揮官などへの指揮の委譲で代替できることもありますが、決心(決めること)は絶対に誰にも委任することはできません。
この「決心」は、決めたことに対する全ての結果、責任も伴うものなので、非常に重たい役割と言えます。

「決める」ためには嫌われる勇気も必要

陸上自衛隊の指揮官の「決める」という行為は、何もオペレーションの場面に限ったことではなく、日常的な業務の中でも多々あります。
実際に部隊で勤務していると、軽重はあれど毎日が決心の連続です。
指揮官は何か物事を決定した際、努めてその理由を部下に分かりやすく説明しなければなりません。
理由を説明して理解してもらえれば、部下がより能動的に行動できるようになるからです。
でも、部下が2〜3人であれば、一人一人と話し合って理解してもらうことはできると思いますが、部下の数は20人、30人と増えるに従い、指揮官が決めたことを個別に説明するのは現実的に難しくなります。
一つ一つの決心事項を、じっくり説明する時間もないのが実態です。
なので、全体に対して、決心した内容とその理由を簡潔に説明するだけになることが多くなります。
そすると、指揮官の決定事項が気に入らない隊員も何人か出てきます。

「なんで中隊長はあんなこと決めんたんだ?」とか、「俺の意見を無視した」と、不満を持つのです。
そして、そうこうしていると「中隊長は現場のことが分からない人」とか、「独善的」とか陰口を叩かれ、しまいには「あの中隊長は嫌いだ」となってしまう部下も何人かはでてきます。

もちろん、そうならないように、指揮官は常日頃から自身の考え方や為人(ひととなり)を理解してもらえるように、部下隊員一人一人としっかりコミュニケーションを取るよう心がけています。
それでも、50人集まれば50通りの人格があるので、一つの決心事項を全員にとって好ましいものにするのは難しい場合もあります。

そもそも、指揮官の決心は、「部隊の任務にとって」とか、「組織にとって」という観点でなされるものなので、仕方がない面もありますが、それでも指揮官も人間なので、心の中では「嫌われてしまうのかな」と不安に感じたりします。
でも、そこは指揮官(上司)の役割として、「たとえ何人かに嫌われても、責任を持って決心する」と、いわば「嫌われる勇気」を持たなければなりません。

この「嫌われる勇気」にパワハラの要素は1mmもありません。
役割を全うしただけのこと。
だから、上司が嫌われる勇気を持つことは、必ずしもパワハラつながるものではないのです。

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まとめ

「上司の嫌われる勇気=パワハラ」ではないことがご理解いただけたでしょうか。
そもそも今回読んだ本は、管理職になりたての悩める私と先生との対話なので、管理職なりたての若手マネージャーをターゲットにしていると思います。
おそらく部下の数は2〜3人。
それであれば、全員で話し合って協力関係を築く民主的なリーダーシップも可能だと思います。
また、管理職初心者の頃に「民主的なリーダーシップ」を実践しておけば、より多くの部下を抱えるようになった時に、一人一人に気を配りつつ、「嫌われる勇気」を持った決心ができるようになると思うので、良きリーダーになれるのではないでしょうか。
この本を読んでそんなふうに感じました。

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