ニュース解説:ロシア軍は警戒部隊が真っ先に逃げ出した? 警戒部隊は逃げるのも大事な任務です

この記事はアフィリエイト広告を利用しています。

警戒部隊が逃げ出して総崩れ?

文春オンラインに、ウクライナ情勢に関して「〈ロシアの苦境〉警戒部隊が真っ先に逃げ出し総崩れに…専門家が指摘するロシア軍の弱さの原因とウクライナの3つの勝因」いう見出しの記事が掲載されていました。
そのなかで、元防衛大学校の准教授で軍事研究家の関口氏の話として、以下のような記載がありました。

「戦場では情報収集などを任務とする『警戒部隊』が前線を監視しています。15キロ先に敵の部隊が迫っていることが分かれば、後方の主力部隊にアラートを発する。敵が優勢な場合、警戒部隊は自らを捨て石にして、他の部隊を逃がすのです。」  
しかし、この警戒部隊がほとんど機能していなかったと関口氏は分析する。
「戦場の映像などを見ると、ロシア軍の警戒部隊が真っ先に逃げ出したように見受けられます。さらにパニックが連鎖し、次々と部隊が逃げて、総崩れ状態になったようです。(中略)ロシア軍は命令に基づく『撤退』と主張していますが、武器弾薬さえもそのまま置いて後退するのは、戦略的撤退ではなく単に逃げたと思われても仕方ありません」

出典〈ロシアの苦境〉警戒部隊が真っ先に逃げ出し総崩れに…専門家が指摘するロシア軍の弱さの原因とウクライナの3つの勝因

頼りにすべき警戒部隊が、主力に先んじて逃げ出したとのこと。
しかも、武器や弾薬を残置して。
確かに、警戒部隊がいた場所に武器とか残されたままであれば、パッと見で逃げ出したような印象を受けるかもしれませんが、警戒部隊は逃げるのも任務だったりするので、一概に「士気や練度の低さから逃げた」と言い切れない側面もあります。
この記事では、これについて解説したいと思います。

※本記事はミリタリーの戦術の解説が目的であり、ロシア軍の行動を正当化するものではありません。

警戒部隊とは

警戒部隊の任務

そもそも、警戒部隊とはどんな部隊なのでしょうか。
陸自の戦術において、警戒部隊は陣地防御の場面で使われることが多いです。
今回の記事を読む限り、ウクライナ軍が攻撃、ロシア軍が防御と思われるので、ロシア軍も一般的な戦術に従って警戒部隊を運用していたと思われます。
防御における警戒部隊は、通常、以下のような任務を持っています。

  1. 敵の近接の早期警告と敵情解明
  2. 主戦闘地域(主力の第一線陣地)の欺騙
  3. 主力のための時間稼ぎ
  4. 敵戦力の減殺

1は主力よりも遥か前方に出て、敵の攻撃部隊と最初に接触してその近接を主力に知らせ、併せて、敵部隊と戦闘することで、その戦力、フォーメーションを解明するための情報を獲得するというもの。
最近はドローンがあるので、警戒部隊を出さなくても攻撃部隊の動きは逐一掴めるかもしれませんが。

2は「防御の第一線はここだよ」と見せかけるもの。
攻撃部隊にしてみると、地形縦深を活用した数次にわたる防御を行おうとしているのか、または本当に防御の第一線がそこなのかは戦ってみないとわからないときもあります。
これにより、攻撃部隊は無駄に弾薬や燃料を消費してしまうので、防御部隊主力の戦闘を有利にすることができます。

3は2とも関係するのですが、攻撃部隊に無駄な戦闘展開を強いることで、主力の防御準備のための時間を稼ぐというもの。
いったん戦闘展開を開始し、その後で「これ違った!」と気づいて攻撃を中止しても、戦線をたたんで接敵行進を再開するまでには、どうしても時間がかかってしまいます。

4は分かりやすいですね。
警戒部隊が少しでも多くの敵を撃破することができれば、主力の戦闘を有利にすることができます。

警戒部隊はボロボロになるまで戦ってはいけない

警戒部隊は、上記のように主力の前方でさまざまな目的に従って運用されますが、その中で大事なことがあります。
それは、ボロボロになるまで戦ってはいけないということ。
その理由は、警戒部隊は前方地域での任務終了後、後退して予備隊になるからです。
防御において十分な予備隊を持つことは、部隊運用の柔軟性を確保する上で極めて重要なことです。
予備隊になった場合、取られた陣地を取り返す逆襲や、後方地域に対する空挺・ヘリボン攻撃対処など、さまざまな場面で運用される可能性があるので、戦えるだけの戦力をしっかり維持しておかなければならないのです。

警戒部隊の戦闘は難しい!

ボロボロになるまで戦ってはいけないとはいえ、早々に後退してしまうと、時間稼ぎや攻撃部隊の減殺ができません。
でも、攻撃部隊とがっぷり四つに組んでしまうと、敵との間合いがきれず、後退のタイミングを逸して真面目(しんめんぼく)な戦闘に巻き込まれて戦力を減少させてしまいます。
どのタイミングで後退するかは、現場の指揮官の判断によるところが大きいのですが、これには正解はなく、なかなか難しい状況判断を迫られるのが実態です。
文春オンラインの記事の中で、「武器弾薬をそのまま置いて」とありましたが、もしかしたら、警戒部隊の指揮官が「今後退しないと取り返しがつかない事態になる」と判断した結果なのかもしれません。

まとめ

警戒部隊は限られた戦力でいくつかの役割を担っており、その状況判断は大変難しいものです。
指揮官のセンスによるところが大きいかもしれません。
本当に逃げ出してしまったのか、あるいは状況判断の結果だったのか。
今後の戦況で判断できるかもしれませんね。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です