マネジメントに「訓令戦術」を適用してみよう〜目標とその達成期限だけを示すシンプルなマネジメント 

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マイクロマネジメントになっていませんか?

ネットでマネジメントの意味を検索すると、P.F.ドラッガーが定義した「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」が最初にヒットします。
ほかには、「資源、資産、リスクを管理して経営を効率化させる手法」と解説しているものもあります。

これを実際の企業での管理職の役割から見てみると、業務管理、労務管理などに細分化され、「管理職の仕事は多いな〜」という印象を受けますが、個人的には全て「目標達成に向けた活動の管理」に集約して表現できると思います。

売上などの目標達成に向けた活動は、複雑多岐にわたるものですが、その中において企業でも自衛隊でも、管理職にありがちなのが、部下に事細かく指示するマイクロマネジメント。
特に、プレーヤーとして実績のある人ほど、その傾向は強いように感じます。
自らの成功体験、培った手法から抜け出せず、部下にそれを再現させようとする。
本人に自覚はなくても、知らず知らずのうちにやってしまいがちで、そこには悪意や部下に対する不信感があるわけではなく、親切心や責任感からつい指示が細かくなってしまうことが多いように感じます。

でも、それを続けていると管理職として大事なマネジメントが疎かになり、また、結果的には部下の成長も妨げてしまいます。

では、どんなマネジメントが理想的なのか?
そこに明確な答えを見つけ出すの難しいのですが、ミリタリーの世界で編み出された「訓令戦術」が一つの参考になるかもしれません。

訓令戦術とは

訓令戦術は、プロイセンの天才参謀と言われたヘルムート・フォン・モルトケが提唱したもの。
「戦術」とありますが、攻撃・防御といった戦い方ではなく、指揮・統制の要領を示すものです。
その内容を簡単にいうと、指揮下部隊に達成すべき目標とその期限だけを命令で示して、そのための細部のやり方は部下指揮官に任せるというもの。
第一次世界大戦頃から主要国の陸軍に定着し始めました。
訓令戦術より前は、師団級以上の大部隊の指揮官が、号令で全ての部隊の行動を律するという「号令戦術」が一般的でした。
しかし、火砲の長射程化や、航空機や鉄道といった機動手段の発達により戦場が広域化し、指揮官が現地で全てを把握して号令で部隊を動かすことが難しくなってきました。
一方で、同じ時期に発達した通信機により、遠く離れた部隊ともリアルタイムで意思疎通ができるようになり、現地にいなくてもその状況を把握できるようになりました。
これらの要因により、戦場での戦い方は現地指揮官に任せるという訓令戦術が編み出され、今では世界中の陸軍のスタンダートと言ってもよいほどの指揮・統制の様式となりました。

訓令戦術を日々のマネジメントに適用してみよう!

訓令戦術のマネジメントへの適用方法

それほど難しく考える必要はありません。
管理職であるあなたは、配下の人たちに「達成すべき目標」と「達成の期限」を示すだけなので。
「え?!顧客管理とか、リスクマネジメント、社内調整はどうするの??」と思われた方。
それも現場レベルのものは全て部下に任せましょう!
でも丸投げになってはダメ。
目標や期限の設定にはそれぞれ注意するポイントもありますので、以下で解説していきます。

目標を設定する

訓令戦術を適用するにあたって、最も大事なステップはこれになります。
管理職であるあなたには、企業として、あるいは部門として達成すべき売上などの目標が示されていると思います。
しかし、それをそのまま部下に示すのはNG。
しっかり任務分析をして、達成可能、かつ理解容易な目標にブレイクダウンしなければなりません。
その手法は別記事で解説していますので、そちらを参考にしてください。
(リンクはこちら→「目標の設定には任務分析〜与えられた任務から達成すべき目標を明らかにする手順(その1)」)
そして、設定した目標を部下に示す際は、その案出過程や狙い、全体における位置付けをよく説明して、十分に理解してもらうように留意しましょう。
意義を理解できれば、あなたが細かく指示しなくても、部下は主体的に動けるようになるはずです。

達成期限を示す

達成すべき目標を示したら、次に「いつまでに」という期限を設定します。
この時に、最終ゴールの時期だけを設定するのではなく、主要なマイルストーンも併せて示してあげましょう。
その設定要領は、まず、企業や部門の中期戦略、年間活動計画などから、自分の組織の目標達成時期を検討します。
その際、最低限のバッファを持たせた時期に設定するのがポイント。
なぜなら、さまざまな不確定要素により、全ての業務が予定通りに進まないのが常なので。
また、期待した売上に達しない場合は、リカバリのためのプランを発動する必要もあるからです。
こうして最終期限が決まれば、次にマイルストーンの設定。
任務分析の中で、ミリタリーでは戦況の推移を検討します。
これを企業の活動に置き換えると、営業活動の推移になろうかと思います。
その中で、判断の分かれ目となるようなタイミング、または自社の、あるいは顧客の業務上の主要な結節、例えば、次年度の予算が決まる時期などの前あたりに、自組織のマイルストーンを設定すればOKです。
マイルストーンでは、業務の進捗状況をしっかり把握し、何か問題があれば、部下と話し合ってその解決策と次の報告のタイミングを導きだすようにします。

活動に必要な資源を与える

訓令戦術を適用するにあたって、これを忘れてはいけません。
忘れると、ただの丸投げになってしまいます。
必要な資源と言われると、販管費が真っ先に思いつくかもしれませんが、それだけでありません。
営業であれば、社内外の人脈の紹介のほか、単独ではなくチームを編成するなど人的要素も、活動する上での必要な資源となります。
これは部下の経験値によっても変わってきます。
例えば、経験の浅い社員の場合、一人で顧客と向き合うには無理があるので、ベテラン社員とコンビにするとか。
この必要な資源が何かを見つける糸口は、任務分析の中にあります。
任務分析では、陸上自衛隊の場合は2ランク下の部隊の視点で検討します。
師団であれば中隊レベル、中隊であれば班とか分隊レベル。
これにより、何が必要かが明らかになるのです。
会社の課長であれば、一般社員レベルに、部長であれば主任クラスにブレイクダウンして考えればよいと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。
部下に示す内容はシンプルでも、そこに至るまでには色々考えなければならないこともあります。
また、部下によっては初めのうちは戸惑い、逐一確認を求めてくることもあるかもしれません。
そうなると、「最初から細かく指示を与えるか、もしくは自分も一緒にやりながら、細かな指示を与えるほうが早い」と思ってしまうかも。
でも、ここでグッと我慢。
マネジメントスタイルを変えた当初は、うまくいかないこともあるかと思いますが、そのうち部下も慣れてきて、細かく指示されるよりも、「戦場での戦い方は自分で決める」という、自主裁量の余地を与えられる方を望むようになるでしょう。
そうなればしめたもの。
管理職として本来やるべき将来戦略の検討とか、労務管理などに注力できるようになり、また部下の成長も助長できます。
ぜひ、この訓令戦術をマネジメントに取り入れてみてください。

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