防衛3文書の改訂〜注目すべきは「敵基地攻撃能力の保有」だけではない! 衛生機能の変革に注目せよ!

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新たな国家安全保障戦略を決定

政府は12月16日、国家安全保障の基本方針となる国家安全保障戦略を閣議決定しました。
これを聞いてピンとこない方でも、防衛費の大幅増額と、その財源の一部を増税で賄うことを「国民の責任」と表現し、メディアで叩かれていたことは記憶にあろうかと思います。
閣議決定から10日以上経った今でも、「防衛増税」と騒がれていますね。
個人的には、借金で防衛力整備を続けていくことはあまり良いことだとは思わないので、岸田総理の考えには賛成ですが、今回の記事のテーマはそこではありません。
閣議決定された防衛3文書の中で、「ここが大事!」と思うポイントを解説します。

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防衛3文書とは?

そもそも防衛3文書とは何でしょうか?
いろいろなメディアの記事で解説されていますが、要は「日本の安全保障政策の方向性を定め、それに基づいて防衛力整備を進めていきましょう」というものです。
3文書と言われるだけに①国家安全保障戦略、②国家防衛戦略、③防衛力整備計画の3つの文書で構成されています。
①と②は、20年後を世界情勢や日本の姿などを勘案しつつ、「今後の10年はどうあるべきか?」を検討して、安全保障政策や防衛力整備の指針を定めたもので、どちらかといえば包括的な内容になっています。
一方、③は上記の指針を受けて、10年後と5年後の自衛隊の体制を定め、今後5年間に実際に進めていく防衛力整備について記述されているので、より具体的な内容となっています。
ちなみに②は以前は「防衛計画の大綱」と呼ばれ、③は「中期防衛力整備計画」と呼ばれていましたが、今回で名称が変更されています。

細部内容については、防衛省ホームページにありますので、そちらでご確認下さい。
リンクを以下に貼っておきます。
(関連リンク→「防衛省HP:国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画」)

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反撃能力よりも本当に注目すべきは「衛生機能の変革」

今回の改訂の中で、一番注目され、物議を醸しているのは、反撃能力の保有を明記した点ですよね。
しかし、個人的に「だいぶ踏み込んだな〜」と感じたのは、反撃能力よりも「衛生機能の変革」です。
実は前回の中期防衛力整備計画(平成30年12月)にも、防衛力を支える要素として「衛生」という項目はありました。
でも、その内容は単なる掛け声的なもので、具体性に欠けるような印象。
例えば、「南西地域の衛生機能の強化を重視」とあっても、具体的に何をどう強化するかについては書かれていません。
他にも、「戦傷医療対処能力を向上」とありますが、通常の医療サービスとの違いが分からないので、特別感はなかったです。
全般的に「うーん、確かにそうだけど。で、どうやるの?」といった感じのものがほとんどでした。
強いて言えば、「装甲化した救急車の導入」ぐらいが具体的な内容だったのですが、これも小手先のような感じで、「なんだかな〜」が正直な感想。
具体性がないゆえに、前中期防の期間中、衛生分野の施策はあまり進まなかったのではないかと推測します。

しかし、今回改訂された内容はかなり具体化されています。
何よりも「変革」という言葉を使っていますから。
例えば、先ほど挙げた「南西地域の衛生機能の強化を重視」に関して、以下のように記述されています。

自衛隊那覇病院の機能及び抗たん性を拡充することが有効と考えられることから、同病院の病床の増加、診療科の増設、地下化等の機能強化を図る。

出典:防衛省ホームページ「防衛力整備計画」

単に病床数を増やすだけでなく、収容された戦傷者が適切な治療を受けられるような配慮も見られます。
また、「戦傷医療対処能力」に関しては、さらに踏み込んだ記述となっています。

戦傷医療における死亡の多くは爆傷、銃創等による失血死であり、これを防ぐためには輸血に使用する血液製剤の確保が極めて重要であることから、自衛隊において血液製剤を自律的に確保・備蓄する態勢の構築について検討する。また、血液製剤と並び戦傷医療において重要な医療用酸素の確保のため、酸素濃縮装置等についても整備を行う。

出典:防衛省ホームページ「防衛力整備計画」

この手の現実的かつ生々しい記述は、日本人はあまり好まないように思いますが、一人でも多くの戦傷者の命を救うために、絶対に必要なことが書かれています。

他にも、以下の点に注目だと思います。

  • 衛生隊員の准看護師と救急救命士の資格取得推進
  • 緊急外科手術に関する統合の教育課程の新設
  • 艦艇での洋上外科手術に関する教育訓練
  • 航空後送間救護のための訓練装置の導入
  • 各自衛隊の衛生に関する教育訓練の共通化と統合化
  • 隊員の身体歴情報の電子化

防衛省が戦場での医療サービスについて、これから本気で取り組んでいこうとしていることが伺えます。

まとめ

自衛隊が「有事に機能する=本当に戦えるようになる」ためには、衛生は不可欠な要素です。
これは、受傷した隊員を治療して第一線に戻すためというよりも、隊員の士気に及ぼす影響が極めて大きいからです。
自衛隊にしかできない任務は相当の危険が伴うもの。
だからこそ、何かあっても決して見捨てない体制をしっかり構築することが、真に機能する組織となるための第一歩だと思います。
あとは、今後5年間でどの程度まで「衛生の変革」が達成されるか。
注目しましょう!

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