「陸自の個人装備品は貧弱」という報道について、元自衛官として思うこと

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被災地の自衛隊の装備品ボロボロ

1月1日に発生した能登半島地震に伴い、多くの自衛官が被災地に派遣され活動していますが、1月14日付の写真週刊誌FLASHのweb記事に『「靴の中はずっとぐちゃぐちゃ」能登半島地震で災害派遣に向かう自衛隊員が持参する装備品のモロさ』という記事が掲載されていました。
以下、記事の抜粋です。

自衛隊員は大多数が標準装備で戦闘靴(半長靴)2型という官給品を使う。これは救助や被災地作業に最適な靴ではないことがわかった。戦闘靴は長時間歩行で疲れにくいことを重視しており、耐踏み抜き防止効果は乏しい。
(中略)災害派遣経験のある自衛隊員はコンバットブーツや米軍が採用している鋼鉄製のインソール等を自腹で買う。自分の身は身銭を切って自分で守るしかないのが現状だ。
(中略)
自衛隊の官給品の雨具にもフード等に水が浸透しやすい問題点がある。気温が低い状態で長時間、水が浸透した雨衣を着用すれば低体温症の原因となる。災害派遣に慣れた古参の隊員は登山用品等の優秀な雨具を自費購入している。
(中略)
自衛隊の官給品の手袋は滑りやすく破れやすい。これまで、災害派遣時に自衛隊員は作業用の手袋や軍手を大量に自腹購入してきた。

出典:FRIDAY DIGTAL "「靴の中はずっとぐちゃぐちゃ」能登半島地震で災害派遣に向かう自衛隊員が持参する装備品のモロさ"

官品の半長靴、雨衣(「あまい」と読みます)、革製手袋(通称「革手」)について、その貧弱さ故に自費購入していると報じていますが、実際にどうなのかというと・・・
私が現役の頃は記事の通りでした。

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自費購入は多かった

私が現役の頃、けっこう色々な種類の”グッズ”を自費で購入していました。
例えば、椅子付きのリュック、書類を入れる迷彩柄のバッグ(FOバッグと呼ばれていました)、防寒グッズ、雨衣(3万円くらいしました)などなど。
中でも、革手にはかなりお金を使った記憶があります。
私が入隊した頃は、官給品の手袋といえば布製の軍手のみだったので、耐久性があり、細かい作業にも使える革手は自分で買うしかなかったのです。
官品の革手が登場してからも、そのフィット感がイマイチだったので、部隊勤務の際は必ず革手は購入していました。
当時、古参の隊員からは「快適さを求めるのなら、個人装備にお金をかけないと」とよく言われたものです。

一方、幹部という立場上、あまり私物で身の回りを固めることはできず、また、訓練検閲の隊容検査の時には全て官品でなければならなかったので、訓練中のどさくさに紛れてこっそり私物に交換したりしていました。

別の理由で私物を使うことこも

余談ですが、快適さを求めること以外に、別の理由で私物を購入することもありました。
それは、亡失対策です。
貧弱であっても官給品。
税金で調達したものなので、その管理はしっかりやらなければなりません。
もし失くしてしまったら書類一筆書かされることも。
手袋のように、消耗が激しいものであればそれほど大変ではありませんが、防寒着のような消耗度が低く、単価が比較的高いものは失くしてしまうと大変です。
ずいぶん昔ですが、陸自の官品がミリタリーショップで売られていたという事案があってから、その管理がかなり厳しくなりました。
だから、「失くして面倒な思いをするくらいなら」と私物を買う人もいましたね。
中には模擬弾倉や弾納を買う人もいました。

これらの私物は駐屯地の売店で売っているほか、給料日になると駐屯地内で外部の業者が展示販売することもあり、普段売店で買えないものもあったりするので、これを楽しみにしている隊員もいました。

個人装備は満足させることが難しいけど・・・

個人装備品はまさに個人が使うものなので、使用感や着用感など、それぞれ好みに合わせるのは難しいと思います。
例えば、皆さんが防寒用に手袋を買おうと思った時、お店に行っていろんなメーカーのものを試着してみて、着用するシチュエーションや自身の手にフィットするものを選ぶと思います。
これを官品で実現しようとすると、革手一つに複数のメーカーのものを取り揃える必要が出てきます。
何社分の革手が揃えば全隊員が自費で購入しなくて済むのか、となると、これはかなり難しい話です。
防寒具や雨衣、背嚢(リュック)についても然り。

とはいえ・・・

個人装備品の研究開発や調達にはもっと予算を投入してもいいのでは、と思います。
私が現役の頃、陸曹の方々に支給される2着の作業服(普段、駐屯地で着用する作業着のようなもの)のうち1着は、「古品」という中古の作業服が支給されていました。
もちろん、度重なる洗濯で色褪せていて、アイロンも相当かけられたものなので表面にちょっと光沢もあったりと、見た目的に貧相な感じで。
知り合いに聞いたところ、これは今でも変わっていないようです。
ちなみに、私が幹部候補生の頃は、2足支給される半長靴のうち1足は古品。
いくら手入れがしっかりされていたとはいえ、夏は汗だく、雨が降ればぐちゃぐちゃという、過酷な環境で知らない誰かに酷使された靴を履くことには正直抵抗がありました。

古品ではなく新品を、そして傷めばすぐに新品に交換してもらえるくらいになれば、少しは満足度も向上するのではないでしょうか。
また、隊員がどんな私物を購入しているのか調査してみれば、個人装備品としてどんなラインナップが必要かも分かるかと思います。

過酷な環境で任務を遂行する隊員の姿は認識されていますので、ここにお金をかけることに対して、国民の理解を得ることは難しくはないと思います。

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