パワハラの要因は意外なところにもある?謙遜するタイプの人が思わずやってしまうパワハラとは
絶対服従の組織だからパワハラ起きやすい?
最近、ニュースで自衛隊でのパワハラに関する記事をちょくちょく目にし、元自衛官としては、本当に残念に感じるところもあります。
一方で、記事で伝えられていることが、必ずしも正しいことばかりとは言えない場合もあります。
例えば、「自衛隊は上司の命令には絶対服従だから、パワハラが起きやすい」という見解。
確かに、自衛官は上官の命令に服する義務がありますが、これがイコール「パワハラ」の温床という訳ではないと思っています。
そもそも命令権者は、その職責を重さを自覚しながら、「全ての責任は自分」ということを理解した上で命令を発しています。
これは部隊での指揮関係のみならず、防衛省内や師団司令部などにおける職務上の指示でも同じことです。
職責を自覚している人は、パワハラは組織にとってなんら利益をもたらさないことを知っています。
厳しく指導することはあっても、暴言を吐いたり、部下の人格を否定することはありません。
では、なぜパワハラが起きてしまうのか?
実は、意外な人もそうなってしまうことがあるのです。
これはあなたの職場やあなた自身にも当てはまるかもしれませんよ。
謙虚でいい人なのにパワハラも
パワハラをする人は、自己肯定感の強い自信家、傲慢なタイプに多そうなイメージがありませんか?
これは間違いではないかもしれません。
でも、正しくもないと思います。
なぜなら、普段は「いえいえ私なんて」と、自分に自信がなく、謙虚そうに見える人でもパワハラをやってしまうことがあるからです。
「えっ、そういう人は優しい穏やかな人が多いけど??」
そう思いますよね。
でも、ちょっとしたきっかけで、傲慢な人がやってしまうパワハラと同じ構図を生み出すのです。
謙虚な人の危険な思考〜「こんな俺でも」
それほど自信家ではなく、謙遜するタイプの人は、自分の能力を低く評価していることがあります。
そんな人が自分の部下に仕事を任せる時、「こんな俺でも彼と同じくらい若い時、同じ程度の仕事をこなすことができた。だから彼にもできるだろう」と思ってしまうことも。
実はこれが危険なのです。
もし、その部下の仕事が自分の想定以下だった場合、人によっては、「なんでこんな簡単なことができないんだ?」と強い不満を感じ、その結果、感情的に部下を怒鳴りつけたり、「お前はバカか」といった人格否定的な暴言を吐いてしまうことに。
この手のタイプの人は、普段はいい人です。
だから余計に人を傷つけてしまい、取り返しのつかないパワハラとなってしまうのです。
「こんな俺でも」思考を捨てて相手をしっかり見る
すごく謙遜して、「いえいえ私なんて」と思ってしまう人は、自分がこれまでどうやって色々な仕事を成し遂げてきたのか、今一度思い出してみましょう。
些細な仕事だと感じていたことでも、よくよく思い出してみると、先輩や同僚から助けられていたことがあったと気づくかもしれません。
そもそも、組織の一員として仕事をしている以上、単独で成果を出していくということはあまりないと思います。
先輩や同僚との何気ない雑談から得た、ヒントやインスピレーションで仕事を処理できたことも多々あったはず。
それを「能力のない自分でも”一人で”やってこれた」と思うのは、”謙遜に潜む傲慢”と言えるのではないでしょうか?
「いえいえ自分なんか」と言いつつも、その根底には自信過剰や思い上がりが隠れていますよ。
なので、「こんな俺でも」という思考はいっさい捨てて、自己評価に依存することなく、目の前にいる部下をしっかり見つめましょう。
部下によっては、簡単だと思えることで苦労することもあれば、「これは難題だ」と誰しもが思うことをサクサクと処理してくれることもあります。
ちなみに、陸上自衛隊の野外幕僚勤務という教範には、「部下に仕事を任せる際、相手にどこまで細かく説明してやらせるかは、その都度考えて決めましょう」的なことが書かれています。
つまり、「自分でもできた」という基準ではなく、「部下の能力、得手不得手、性格などをベースに、アサインする内容をコントロールしましょう」ということです。
もし、ご自身のことを「激しい性格ではなく、また、そんなに自信家ではないから、パワハラなんてやっていないはず」と評価していたとしても、一度振り返ってみてください。
「こんな俺でもできたのに」と思ったことがあれば、今後部下と接するときに「謙遜に潜む傲慢はないか?」と気をつけてみましょう。