野外令には「人事」についても書いてある〜陸自の作戦における人事は企業戦略の人事にも適用できます!

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野外令は指揮・運用の基本的原則を解説したものですが

野外令とは、国土防衛作戦における諸職種連合部隊の指揮・運用の基本的原則が記されたものです。
だから、戦いの原理・原則事項、攻撃や防御といった戦術行動について記述されているのは、何となく理解できるのではないでしょうか。
一方で「人事」と言われると、

「これって作戦とどう関係があるの?」

とか、人によっては

「人事は会社の人事部がやってて、会社の”戦果”である売上には直接関係ないけど」

と思う人もいるのではないでしょうか?

しかし、人事は戦う組織にとって極めて重要な要素なんです。
というわけで、今回は陸自における人事を解説したいと思います。

今回の記事も、陸自の教範(教科書)である野外令の記述に沿って解説します。
これは書店で買うことはできませんが、国会図書館で1968年版を閲覧することができます。

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陸自の作戦における人事

人事の目的

陸自の作戦における人事とは、

「勢力を充実するとともに個人を最も有効適切に活用し、部隊の人的戦闘力を維持増進して作戦を支援すること」

を目的としています。
陸上自衛隊は人が基本の組織。
これは航空自衛隊が航空機、海上自衛隊が艦船を主体に作戦を行うのとは明らかに異なる点です。
だから、勢力(マンパワー)を充実させ、個人の能力を最大限に発揮させることが重要となるのです。

そして、人事におけるキーパーソンは何といっても指揮官。
なぜなら、陸自において人事権は指揮官固有の権限で、指揮系統を通じて指揮官自ら行うものを主体としているからです。
かといって、指揮官が人事権を振りかざすだけでは個人の能力の発揮には繋がりません。
指揮官による統御と密接に連携することが不可欠となります。
ちなみに「統御」とは、部下が「この人について行きたい、組織に貢献したい」と、自然に心から思えるようになること。
指揮官を核心として、組織として団結し、目標に向かって進む様を想像すれば分かりやすかと。
詳細は以前に解説した記事がありますので、そちらを参考にしてください。
(その記事はこちら→できるリーダーを目指して:陸自のリーダーシップ 部下と一体となって任務を完遂するために必要な「統御」

人事は人間性の尊重が基本

野外令では、人事とは、究極的にはそれぞれ異なる個性及び人格を持つ個人を対象とするので、人間性の尊重を基調としなければならない、とされています。
1968年の時点でこのような記述があったとは、ちょっと驚きではないですか?
ましてや軍事的組織で。
映画などでは、軍といえば人間性無視のような組織として描かれますが、実際は人間性の尊重を大事にすることを追求しているのです。
これは全く不思議なことではなく、誰もが経験したことのない過酷な環境で任務を遂行する組織だからこそ、人間性の尊重が基本になければ、ただの粗野な集団になってしまいますよね。

人事の要則

人事の要則は①先行性と融通性、②総合性、③効率性の3つとされています。
それぞれ簡単に解説して行きます。

先行性と融通性

人事は、何か施策を開始してからその効果が出るまで時間がかかるのが一般的です。
だから、将来を予測しつつ早期に着手しなければなりません。
これを会社に置き換えると、自社や自部門を取り巻く将来の環境を予測し、その時の会社(部署)のあるべき姿を具体化して、「そのためにはどんな人材が必要か」を考え、計画的に人材育成や採用などを行う必要があるということになります。

一方で、計画通りにいかないのが世の常。
一生懸命育てた有望な人材が会社を去ることもあるでしょうし、想定した環境にならずに人材を持て余すこともあるでしょう。
「絶対こういう環境になる」とか、「この人がいないと将来成り立たない」的なガチガチな予測や計画ではダメで、ある程度バッファを持たせること、つまり融通性にも留意することが必要です。
これは、それぞれの組織の特性や置かれた環境により異なりますので、一概に「これが融通性です」というものはありません。
指揮官(リーダー)と人事施策担当者の腕の見せ所とも言えますね。

総合性

人事は勢力、補任、規律、士気、健康管理という機能で構成されており、それらに紐づく業務は、補充、人員交代、表彰、給与、広報など広範多岐に渡ります。
それゆえ、それぞれの努力の方向性がバラバラになることもあります。
これでは一つの組織としてあるべき姿を追求できないですよね。
だから、まずは明確な方針を確立して、主軸となる業務を定め、そこに他の業務の方向性を合わせていくことが必要となります。
ここで注意すべきは、主軸となる業務は環境によって変化するものだということ。
例えば、今は新卒採用とその育成を主軸としていたとしても、将来は中途採用を増やすための広報になるかもしれません。
先ほど説明した融通性、ですね。

効率性

ここでは人事支援組織の効率的な運用が記述されています。
人事支援組織とは、陸上自衛隊の場合、人事部のほか、給与を扱う会計隊、規律を維持する警務隊、募集を担当する地方協力本部、厚生活動を担う音楽隊などが該当します。
人材育成を行う教育部隊、学校も人事支援組織と言えるでしょう。
これらの支援能力には当然のことながら限界があり、部隊の全ての要求を満たすことはできません。
皆さんの会社でもそうではないでしょうか?
なので、支援の優先順位を決めて、支援能力をどの程度配分するかを判断し、効率的に人事支援を行うことが重要になります。
ここはなかなか会社に置き換えるのは難しいところですが、会計部門、内部監査部門、採用部門などを想像しながら、それを取りまとめる立場になった時に、その能力をどう運用するか、何を重視して資源配分(人や金)を行うのか? ということを考えていただければ良いかと思います。

まとめ

陸上自衛隊は人が戦力の組織です。
これは災害派遣の映像を思い起こすと分かりやすいですね。
海空自衛隊はヘリコプターや艦艇で支援を行いますが、陸自は人、つまり隊員が現地で活動しています。
人的戦闘力の充実こそが陸自の作戦の要であり、それゆえに人事は重要なのです。
人材あっての、というところは皆さんの会社でも同じでしょう。

ちなみに、今回は野外令に記載された人事のごく一部のみ抜粋して解説しています。
気になる方は国会図書館のホームページから、野外令のデジタル版を実際に読んでみてください。
きっと参考になることがたくさんあると思いますよ。

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